[原子力産業新聞] 2007年5月10日 第2378号 <1面>

カザフと互恵関係構築で合意 ウラン需要の4割確保 両国政府 協定交渉を開始へ

電力会社、商社、重電メーカーの首脳などと共に、中央アジアのカザフスタンを訪問した甘利明経産相は4月29日と30日、ナザルバーエフ大統領、マシモフ首相、イズムハムベトフ・エネルギー鉱物資源相と相次いで会談し、30日には原子力平和利用分野での戦略的パートナーシップ強化のための共同声明に署名した。さらに独法・日本貿易保険による初めての「資源エネルギー総合保険」(5億ドル)の引受け枠の設定や民間ベースのウラン鉱山開発の商談など7分野で24件の協力案件の合意・署名が行われ、豪州に次いで世界第2位のウラン埋蔵量を誇るカザフスタンとの官民一体となった原子力資源外交の成果を印象付けた。

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甘利経産相とカムリ・マシモフ首相とが署名した共同声明では、「世界有数の安定した原子力発電規模と原子力の平和利用に関する優れた技術を有する日本」と、「世界有数のウラン資源埋蔵量を有し原子力産業、エネルギー産業および核燃料製造の高度化のための基盤を有するカザフスタン」が、「相互補完的な戦略的パートナーである」との認識を共有し、両国の協力進展が世界的にも高く評価されることを期待している。

さらに両国は、「カザフスタンによる国際原子力機関(IAEA)の保障措置追加議定書の締結を受けて、原子力協力協定の締結交渉を開始する」ことを表明した。

日本貿易保険と国営原子力公社カザトムプロム(ジャキシェフ社長)との協定では、同公社の円滑な資金調達を促進し、我が国へのウランの安定的な供給を担保するため、同公社向け融資を対象として、「資源エネルギー総合保険」の引受け枠(5億ドル)を新設する。同枠の設定によって、同公社が日本企業向けにウラン取引を行う場合、日本の銀行などから融資を受けやすくし、万一、貸し倒れの際には邦銀に保険金が支払われる。また保険料も従来比最大75%引き下げられ、填補リスク範囲の拡大なども図られる。この枠に基づく最初の引受け案件は、サハラン1鉱区開発プロジェクトに対する3,000万ドルの民間銀行融資となる予定だ。

ウラン鉱山開発では、カザトムプロム社が推進中のカザフスタン南部の新規ウラン鉱区「サハラン1、2鉱区」のプロジェクトの円滑な推進を、同社と丸紅、東京電力、中部電力、東北電力が確認した。同事業では、07年からテスト生産を開始し、14年以降、約35年間にわたってウラン精鉱(イエローケーキ)を年間約5,000トンU生産する新規大規模ウラン鉱山の開発。日本側はこのうち2,000トンUの年間優先取引権を有することになり、これは現在の日本の年間需要の約2割に相当する。

住友商事、関西電力が参画する南部ウェストムィンクドュック鉱山開発でも、カザトムプロム社と同鉱山開発会社のアパック社(出資構成:カザトムプロム社65%、住友商事25%、関西電力10%)の4社が昨年1月に契約した同鉱山開発の確実な履行を確認した。同事業は07年夏ごろから試験生産を開始予定で、10年にイエローケーキを年間1,000トンUフル生産し、全量を住友商事が日本に供給する計画。これで日本の年間需要の約1割をまかなう。

ウラン精鉱の長期調達で、伊藤忠商事とカザトムプロム社が新規売買契約を締結。09年から13年の5年間にイエローケーキを600トンU購入し、日本の電力会社にも供給される予定だ。両者は以前にもイエローケーキの長期売買契約を締結しており、その買い付け量は最大で年間1,000トンUであり、これらは日本の電力会社にも供給される。

このほか、カザフ側がウラン加工に関心が高く、燃料製造についての協力可能性を検討することでも合意した。


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