[原子力産業新聞] 2007年5月31日 第2381号 <1面>

安倍首相が講演 原子力の重要性にも言及 2050年までにCO半減を提案

安倍晋三首相は24日、アジアの首脳・閣僚クラス(現役や経験者)が出席して東京都内で開かれた国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の晩餐会で講演し、地球環境問題について、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を現状の半分にまで低減するとの踏み込んだ提言を行った。

その実現のために、同首相は原子力の重要性にも言及し、「高温ガス炉、小型炉など先進的な原子力発電技術を開発し、安全で平和的な利用を拡大していく」べきだとしている。さらに、国際的な取組みや途上国への原子力導入のための基盤整備をはじめとする支援を積極的に推進する、とアジアの要人たちを前に表明した。

安倍首相はまず、「アジアは世界の成長の中心であり、アジアでこの問題への対応を怠った場合には、世界全体の未来に大きな悪影響が出てくる恐れがある」と率直に危機感を表明した。

京都議定書は人類が温室効果ガス削減という、具体的な温暖化対策に踏み出した第一歩であり、そこには限界もあることは認めざるを得ないとし、3つの懸念を示しながらも、いずれも克服可能だと考えていることを強調した。

第1の懸念は、「経済成長が阻害される」というものだが、排出削減を進めながら経済成長を維持することは可能だとし、優れた技術を有する日本は、これらの両立に大いに貢献できる、と訴えた。

第2の懸念「自国が取り組んでも他国が取り組まなければ問題解決にはならない」という指摘に対しては、率直にその通りだと認めたうえで、「だからこそ先進国と途上国がともに取り組むことのできる仕組みを新たに導入することが不可欠だ」と主張した。

第3の「途上国に対策を求めるのは不公平ではないか」という議論に対しては、「途上国の中にも大量に温室効果ガスを排出する国があり、それらの国々の参加が不可欠だ。各国の責任と能力に応じて取り組むことのできる仕組み」を構築することは可能だ、とした。

安倍首相は、これらの懸念を克服し、「2050年の美しい星、地球」の実現に向けて、3つの提案を行った。

このうち、長期的な戦略として、現在、温室効果ガスの世界の排出量が自然界の吸収量の2倍を超えていることから、排出量を「自然界の吸収量と同等レベルに抑え込む」ために、2050年までに半減するとの目標を提案したもの。


Copyright (C) 2007 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.