[原子力産業新聞] 2007年5月31日 第2381号 <4面>

照射対象拡大へ改造 「常陽」 制御棒も自動制御に

日本原子力研究開発機構は高速実験炉「常陽」を一部改造し、より幅広い燃料体などへの照射を可能にする実験装置を追加するとともに、制御棒駆動を自動制御方式に変更する。実験装置は来年度、制御方式は10年度から使用開始の予定。

「常陽」は、FBRサイクル技術の裾野の広い研究開発に寄与することを求められており、今回の実験装置の追加はこの要請に沿うもの。

これまで「常陽」の照射対象は、「常陽」の燃料体に該当するものとなっていたが、実験装置では同燃料体に該当しないものも照射可能とする。具体的にはプルトニウム、ウランに加えてトリウムの単体や混合物、化合物などとともに、燃料物質以外の高速炉用材料、MA、FPなども照射対象とする。実験装置本体の装荷位置における中性子スペクトルを調整するため、同本体の周囲には試験目的に応じ、ベリリウムや水素含有金属などを内包する中性子スペクトル調整装置も配置する。

自動制御方式の追加は、燃料・材料に係わる温度変動の少ない照射データの蓄積が目的。こうしたデータ蓄積のためには、目標とする照射条件に相当する原子炉出力を精密に維持する必要があるが、「常陽」はこれまで制御棒操作が手動であったため、運転員への負担が大きかった。

今回の改造では、原子炉容器入口における冷却材の温度を従来の約350℃一定から、約250〜350℃に低温化して運転する炉心温度の低温化も行い、材料への照射効果に対する温度依存性も評価できるようにする。


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