[原子力産業新聞] 2007年5月31日 第2381号 <4面>

J―PARC 耐損傷性向上の処理技術開発

J―PARCセンターはこのほど、中性子を発生させる際に水銀ターゲット内で発生する特殊な水銀気泡の生成崩壊挙動を映像化し、同崩壊に対するターゲット容器の耐損傷性を向上する表面処理技術を開発した。

J―PARCでは従来の6倍以上の強度を持つ中性子ビームを発生させ様々な利用実験を行う。この中性子は光速に近い陽子の液体水銀ターゲットへの衝突により発生させるが、衝突部分と周囲の温度差で圧力波が発生し、ターゲット容器の損傷が懸念されていた。

今回、超高速度カメラを使用し、圧力波で成長崩壊する水銀気泡を映像化、損傷を形成する局所衝撃力の定量的な評価に世界で初めて成功した。これにより水銀蒸気の微小気泡が急速に成長した後、数十マイクロ秒で崩壊、マイクロジェットと呼ぶ数十ミクロン径の水銀ジェット噴射が生じ、この噴射が容器損傷につながることを解明した。

同センターでは今回の観察結果を基に、耐損傷性を向上できる表面加工処理技術として、プラズマ浸炭と窒化処理の融合が有効なことを見出した。表面加工により、J―PARCの物質・生命科学実験施設に設置する水銀ターゲットは、損傷が顕在化するまでの衝撃パルスの回数を、1桁以上延ばすことができる。

この表面処理技術は自動車、産業機械など耐食性と耐摩耗性が必要とされる各種摺動部品への適用も可能という。


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