[原子力産業新聞] 2007年6月7日 第2382号 <2面>

近藤委員長が8つの課題示す 学術会議が原子力総合シンポ

日本学術会議の総合工学委員会は5月30日と31日、同会議講堂で主調テーマを「エネルギーセキュリティと地球環境問題の一体的解決に向けて」とし原子力総合シンポジウム2007を開催した(=写真)。

30日は近藤駿介・原子力委員長の特別講演や2つのパネルなどで構成。近藤委員長はテーマを「原子力学界に検討をお願いしたい課題」とし、@エネルギー・環境問題に貢献する技術の評価A隠ぺいの発生原因の根本分析と再発防止策B規制法制の全面改正C発電所の稼働率改善D高レベル放射性廃棄物処分場の選定E人材育成と知識経営Fアジアの原子力利用への対応G燃料事業の多国間管理――を提起した。

技術の評価では原子力が「持続可能な開発」という観点で合意が得られず、CDMの対象外である点を挙げ、この評価の是非に関する提言を要請。規制法制では例として型式審査完了後の個別審査の簡素化、保安検査のみが検査という体系への移行などを挙げた。最終処分場では自治体に協議を委ねる上で情報共有の在り方などが課題とした。

パネルのテーマはエネルギー教育とエネルギー政策。教育では文科省、経産省、原子力機構、大学、産業界などがそれぞれ現状や対策などを説明。原子力人材育成プログラムや原産協会に設置された産官学による人材育成協議会に強い期待を示した。また、東大の上坂充教授は専門職大学院の状況とともに、来年には20年ぶりに原子力の教科書シリーズが発刊されることを披露した。

政策では自民の加納時男議員、公明の斉藤鉄夫議員、民主の大畠章宏議員、柳瀬唯夫・エネ庁原子力政策課長、小川順子・WIN会長などが登壇。加納議員は総点検に関し、失敗を隠ぺいし事象を共有しなかった事は重大だが、今回の徹底した調査の姿勢は評価すべきとの同党の委員会の考え方を示した。大畠議員は専門委員会でまとめたエネルギー政策をこのほど党に上げたことを明らかにした。プルサーマルも含め原子力を推進し、規制の合理化や廃棄物処分の推進などを掲げるとしている。放射性廃棄物問題では「国が前面に出た対応を」、「原子力に経験がある地域での検討を」、「地道で根気強い活動しかない」、「東洋町のケースを考えると闘う広報も必要」など様々な意見が出された。

31日は、鈴木篤之・原子力安全委員長による特別講演「原子力安全をめぐって―よりロバスト(強固)な仕組みは」、十市勉・日本エネルギー経済研究所専務理事による招待講演「国際エネルギー情勢と日本の戦略」、パネル「環境とエネルギーセキュリティ両立への課題」などが行われた。

鈴木委員長は学会に対し、@運転期間中検査を有効に使う方法A燃料健全性のモニタリングデータ――などでの貢献を要請した。


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