[原子力産業新聞] 2007年6月14日 第2383号 <3面>

米NRC 「原子力バブル」の阻止を表明 非原子力事業者の認可発給せず

米原子力規制委員会(NRC)のD.クライン委員長は5日、「原子力バブルは原子力ルネサンスを危険にさらす」とし、原子力発電の経験がない事業者には事業認可を発給しない方針を明らかにした。

原子力ルネサンスが声高に唱えられる米国では、数多くの新規原子力発電所建設プロジェクトが浮上している。そのほとんどが原子力発電事業者によるプロジェクトだが、非原子力事業者によるプロジェクトも数件発表されており、「原子力ルネサンスを象徴する動き」としてメディアで取り上げられている。

しかしクライン委員長はNRCの委員全員の統一見解として、「商業炉を所有するということはアマチュアに出来る事業ではない」と指摘。

そして「事業者の経営方針に口を出すのは規制者としての職分ではない」としながらも、原子力発電事業を手がけるには原子力安全など厳格な資格要件が必要とし、原子力ルネサンスの時流に乗って安易に原子力発電事業に着手しようとする動きは「ルネサンスではなくバブルのようなもの」と危機感を示した。

委員長は具体的な事例は挙げていないが、テキサス州のデベロッパーが経営するアマリロ・パワー社、アイダホ州への建設を唱えるオルタネート・エナジー・ホールディングス社、カリフォルニア州フレズノ市のフレズノ原子力グループなどのプロジェクトを指していることは明らかだ。また今年2月のTXU社買収のように、投資ファンドによる原子力発電事業者の買収に対する警鐘とも考えられる。

ただし、「ニュースタート・エナジー・デベロップメントや、ユニスター・ニュークリアといった、米国内での新規原子力発電所建設を目指すコンソーシアムに非原子力事業者が加盟した場合、NRCはどう対処するのか」、「米国が原子力技術のみならず原子力規制体制も未成熟な国々へ原子力輸出を実施する際に、ダブルスタンダードの非難を受けるのではないか」など、原子力事業の経験の有無で「認可しない」とバッサリと斬り捨てる委員長の姿勢には、疑問視する向きも多い。


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