[原子力産業新聞] 2007年6月28日 第2385号 <2面>

原子力委部会と防災小委が報告書 ガラス固化体防護の検討進む

原子力委員会の原子力防護専門部会と総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の原子力防災小委員会は、ともに高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)等の防護に関する報告書をまとめた。原子力専門部会は輸送も検討範囲に含めた。防災小委員会は政省令レベルの制度設計に必要な技術的詳細事項を検討した。

   ◇   ◇   

原子力委員会の原子力防護専門部会(部会長=内藤香・核物質管理センター専務理事)は19日、第5回会合を開催、技術検討ワーキンググループ(WG)での検討内容を反映させた報告書案「高レベル放射性廃棄物等の防護の在り方に関する基本的考え方」を取りまとめた。同委員会は近くパブコメに付す。

同WGは4月20日の第1回会合から5回の審議で、@ガラス固化体等および関連施設に係る脅威や妨害破壊行為シナリオと対応策A輸送中のガラス固化体等に対する防護B妨害破壊行為に対する防護の基本的な考え方――などを検討した。

今回取りまとめた報告書案は、前会合までに審議した内容にWGの検討内容を反映させたもの。

IAEAが核物質や放射性物質の防護に関する指針類の体系的な整備を進めつつあることなど、最近の国際情勢を示した上で、テロリスト等の不法行為者からガラス固化体、長半減期低発熱放射性廃棄物(TRU廃棄物)、これらを扱う施設などを防護する必要性が高まっていると提起。防護水準の設定では、放射性核種等の濃度などから潜在的危険性の区分Tに該当するが、ガラス固化やモルタル充填しており、海外の事例にも合わせ、同区分V、防護水準C(想定される妨害破壊行為の達成を適切な可能性で防ぐ)とすることが適切とした。防護の手法は、治安当局と具体的な脅威を策定するDBT(設計基礎脅威)方式ではなく、防護措置要件方式を採用して良いとした。

輸送中のガラス固化体は、防護水準C以上に設定することが適切との考え方を示しているが、今後のIAEAなどでの検討状況を踏まえ、速やかに検討するとし、同じくTRU廃棄物は今後の輸送実績も考慮し必要に応じ、検討を進めるとしている。

   ◇   ◇   

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の原子力防災小委員会(委員長=宮健三・法政大学大学院客員教授)は25日、第12回会合を開催、同委員会の下の危機管理ワーキンググループが取りまとめた「放射性廃棄物の埋設事業に係る核物質防護の在り方」を了承した。保安院は近くパブコメに付すとともに、政省令の検討を開始する。

同委員会は今年1月に同在り方の中間報告書を取りまとめ、ガラス固化体およびTRU廃棄物を原則として核物質防護の規制対象とすることが適当とした。今回のWGの報告書は中間報告に示していた「技術的事項の検討」を行ったもの。

主な検討事項は防護規制の対象範囲、ガラス固化体等の防護措置、同埋設終了後の防護。対象範囲では浅地中処分濃度上限値以下のものを規制対象外とした。同上限値は原子力安全委員会が今年4月にα核種濃度10GBq/トン以下などの推奨値を示している。

ガラス固化体の防護区分は相対的に低い区分Vとすること、方式としては国が適切で網羅的なパッケージを提示する防護措置要件方式がそれぞれ適当とした。

埋設終了後は、廃棄物へのアクセスが現実的に不可能になるため埋設事業者に対する防護規制の義務を解除することが適当とした。


Copyright (C) 2007 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.