[原子力産業新聞] 2007年7月12日 第2387号 <2面>

日本アイソトープ協会 食品照射でパネル開く

日本アイソトープ協会は4日から6日まで東京・新宿区の日本青年館で第44回アイソトープ・放射線研究発表会を開催した。このうち6日にはパネル討論「食品照射技術の実用化に向けて」を開催(=写真)、パネリストの講演や会場参加者との質疑応答が行われた。

パネリストの講演は多田幹郎・中国学園大学教授の「食品照射の国内検討状況」、久米民和・日本原子力研究開発機構高崎応用研究所嘱託の「食品照射の技術的背景と世界の実状」、山瀬豊・日本電子照射サービス取締役の「放射線照射の実施と管理」、古田雅一・大阪府立大学准教授の「食品照射に対する消費者動向−みんなのくらしと放射線展の活動から−」。

このうち古田氏はすでに24回目を迎え、毎回2万人程度の参加者がある同放射線展でのアンケート調査結果、この結果などから推測される一般の人の放射線に対する認識の形成などについて述べた。アンケートによると高校生以上で食品照射について、知らないと答える割合は以前は50%以上だったが、最近では30%程度と減少傾向にあるとした。 また、照射食品を買いたくないと答える人は5%に過ぎず、大半の人は安全なら買っても良いなどとする結果が出ることも紹介した。

どういう関係からの情報が信頼できるかについてはマスコミ、消費者団体のオピニオンリーダー、専門家などを挙げ、逆に産業界、大学関係者の信頼感は低いという。古田氏はマスコミに登場する人の影響は大きく、食品照射への理解を深める上で、大きなポイントと指摘した。

同放射線展では会場に10kGyのγ線を照射した胡椒、バジル、ターメリックなどと加熱殺菌したこれらを比較展示、来場者は臭いの違いを体感できる。その結果、多くの人がフレッシュ感ある香りが残る照射品が良いと答えるという。

また大人になるとなぜ放射線に対するイメージが低下するかという点について、古田氏は中学生から高校生になる時期にこうしたイメージが形成されるのではとした。イメージに大きく係るのがマスコミ報道と学校教育と指摘。学校教育の中で原子力や放射線を初めて扱うのは社会科の教科書の原爆投下だが、放射線や原子力エネルギーについて科学的知識として同時期に、社会科と並行して教える必要があると強調した。

パネル討論には一般の人も参加し、「海外で多く出回る照射食品の輸入検査を如何に実施しているか」、「山瀬氏が紹介した医療用品・医薬品・化粧品などに照射していることは非常に参考になり、企業は照射していることを商品に表示するなど消費者に知らせるべき」、「厚労省はスパイス協会が要望書を提出した際、なぜ広く国民に知らせなかったか。議論の必要があるなら、そうしたタイミングで広く議論を求めるべき」などの意見や質問が出された。


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