[原子力産業新聞] 2007年7月19日 第2388号 <1面>

柏崎刈羽が全面停止 M6.8 震央から9km 地震動、設計値大幅上回る

16日の10時13分頃、新潟県上中越沖を震源とする推定マグニチュード6.8の大規模な地震が発生、柏崎市、刈羽村、長岡市で震度6強を観測した。この影響で、震央から約9km(震源から約20km)の距離にある東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の2〜4、7号機の4基が自動停止した。同1、5、6号機は定期検査により停止中。また、3号機原子炉建屋脇の所内変圧器3Bで火災が発生、黒煙を上げたが、2時間後に鎮火した。

この地震で、柏崎刈羽1号機原子炉建屋で、東西方向の地震動680ガルが観測され、設計値の273ガルを大きく上回るなど、5、6号機でも設計上の基準を超える地震動を記録していたことが判明した。

放射能放出については、6号機原子炉建屋の非管理区域で放射性物質を含む漏えい水、7号機主排気筒からヨウ素等の検出があったが、いずれも周辺環境に影響のないレベルだった。同発電所全基がそろって停止したのは、02〜03年度の一斉点検以来のこと。

これら事態を受け、甘利明・経産相は翌17日未明、勝俣恒久・東京電力社長らを呼び、消火活動、放射性物質漏えいへの迅速な対応策の検討、基準地震動を超える地震動の観測などから、安全が確認されるまで同発電所の運転再開を見合わせるよう指示した。

東京電力が18日夕刻までに確認したところによると、同発電所の被害は各号機および廃棄物貯蔵庫、事務建屋、構内道路など広範囲にわたり、軽微な事象を含め合計48件。1号機では消火系配管で約1,670立方メートルの漏えい水(放射能なし)が確認されたほか、固体廃棄物貯蔵庫でドラム缶約数百本が転倒し、うち数十本の蓋が開くなどの被害が確認された。

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原子力安全委員会は17日、地震による柏崎刈羽発電所への影響を受け、臨時会議を招集した。現在、既設原子力施設で進められている新耐震設計審査指針に照らしたバックチェックに関して、柏崎刈羽では、既に地質調査を終えていることから、鈴木篤之委員長は、安全性評価が終了したプラントから順次、電力より結果報告を受けるよう原子力安全・保安院に要請した。

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勝俣恒久・東京電力社長は18日、泉田裕彦・新潟県知事を訪ね、地震に伴う柏崎刈羽発電所の状況を報告するとともに、地震発生時の対応の遅れなどを陳謝した。泉田知事は、「東電の対応は後手後手と感じており、組織上の危機管理に問題がある」と述べた。

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柏崎市は18日、市役所に勝俣社長や高橋明男・柏崎刈羽発電所長を呼び、同発電所全号機に消防法に基づく緊急使用停止命令を出した。命令の対象は建屋内のタンク類などで、原子炉やタービンへの効力はない。

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政府に対する来年度重点提案・要望のため上京した西川一誠・福井県知事は18日、甘利経産相を訪ね、今回の地震に鑑み、原子力発電所の耐震安全性再確認、プラント本体だけでなく周辺施設も含む耐震裕度の確保、災害発生時の迅速な情報提供などを要請した。


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