[原子力産業新聞] 2007年7月19日 第2388号 <3面>

独政府、発電効率の引き上げ義務化を検討 第3回エネルギー・サミット 産業界は反発

ドイツのA.メルケル首相は3日、第3回エネルギー・サミットを開催し、4大電力首脳に、発電効率を2010年から年間あたり3%ずつ増大させるよう要望した。サミットでは脱原子力政策の見直しに関する議論も出たが、首相は改めて、脱原子力政策の見直しを任期中は行わない方針を明言した。

政府は地球温暖化対策として2020年までにCO排出量を40%削減することを掲げており、国内電力大手4社(RWE、Eon、EnBW、バッテンフォール・ヨーロッパ)は、原子力発電所の閉鎖に加えて、発電所の効率化に取り組む必要性に迫られることになった。

首相はサミット後の記者会見で、電力会社の発電効率向上に向けての取り組みをモニターすることも示唆し、「政府の新しい省エネルギー計画では、国内のCO排出量を削減する上で、発電効率の向上を重視している」と強調。発電効率の向上を、年内に法制化して義務付けたい考えを明らかにした。

これに対し産業界は、「電力価格を押し上げ、産業界の競争力を損なう可能性がある」として、計画に懐疑的である。

サミットに出席したEonのW.ベルノタートCEOは、「サミットの議題が温暖化防止に偏重しており、電力の供給保障や経済性に関しては考慮されなかった」と不満を述べている。

同じくサミットに出席した化学大手BASF社のJ.ハンブレヒトCEOは、「制限を強いる枠組みや、野心的すぎる目標の設定は信用できない」と政府提案を酷評。「産業界はエネルギー政策と温暖化防止政策を組み合わせた上で、競争を促進させる施策を求めている」と述べ、「非現実的な要求は混乱を招き、失敗に繋がる」と指摘している。

サミットでは、4大電力の提唱で、予定の廃止期限以降も原子力発電所を運転させるシナリオについても検討された。それによると、原子力発電により2020年までに、CO排出量を最大45%削減することが可能だという。しかし首相は、2009年の次期総選挙までは脱原子力政策の見直しは行わないとの姿勢を貫いている。

ドイツでは17基、総出力2,137万1,000kWが運転中。原子力は国内電力消費量の26%をまかなっている。他の電源別シェアは、天然ガス火力=12%、石炭火力=21%、褐炭火力=24%、太陽光および風力=9%、となっている。

またドイツの原子力発電所はいずれも原価償却を終了しており、経済性は高い。そのため既存の発電所の発電効率を上げるよりも、原子力発電所の運転期間を延長させることの方が、電力会社にとってははるかにインセンティブが働く選択となる。

RWEのH.ロエルズCEOは「脱原子力政策は、国民の温暖化に対する意識が現在のように高くない時に策定されたものだ」として、政府が段階的廃止を再検討するよう強く求めている。


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