[原子力産業新聞] 2007年9月6日 第2394号 <2面>

食品安全委講演会 国際的視点も重要 見上委員長が食品照射で

内閣府の食品安全委員会は9月3日、世界保健機関(WHO)の人獣共通感染症・食品由来疾患プログラムのジェラルド・G.モイ博士を招き、東京・渋谷区神宮前の東京ウィメンズプラザで、「食品に関するリスクコミュニケーション――放射線照射食品をめぐる国際的な状況」と題して講演会を開いた(=写真)。約200人が参加した。

冒頭、食品安全委員会の見上彪委員長が挨拶し、「原子力委員会が報告書を取りまとめ、食品安全委員会で審議した結果、自ら評価する案件ではないとしたが、資料収集は行う必要があり、国際的視点も重要との指摘があった」と紹介し、今回の講演会の企画となったことを説明した。

モイ博士は食品照射の直接の専門家ではないと断りながらも、WHOが過去に行なってきた見解や国際協力などについて紹介した。

まず同博士は、「日本では過去の経験から(放射線に対する)特別な感覚があるものと考える。だが、100%安全なものは何もなく、科学をベースに対処して行かなければならない」と前置きした。

WHOでは、いままでに国際原子力機関(IAEA)、食糧農業機関(FAO)と協力して、1980年に「いかなる種類の食品でも、総平均線量が10キログレイまで照射された食品には、毒性学的な危険性は全く認められない」と結論付けたと述べ、そのとき「10キログレイ」以下としたのは、それ以上の照射の必要性が宇宙飛行士の食糧などを除きほとんどなかったからだ、と補足した。

その時点でも、490もの研究文献が蓄積され最も多い研究となっており、他のどの技術よりもはるかに安全な結果となっているとし、83年には国際食品規格委員会(コーデックス委員会)の規格に採用された。

その後さらに、3国際機関は10キログレイ以上の照射についても調査研究を重ね、97年には結論として、「特に放射線量の上限値を設定する必要はなく、放射線照射食品は、技術的に有効な線量の範囲で、健全であると思われる」とまで踏み込んだ結論を表明するに至った、と紹介した。

10キログレイの照射は、温度にして2℃上昇するもので、同博士は、「食品照射は世界40か国以上でさまざまな食品が認可されており、統一されてはいないものの、多くの国で受け入れられている技術だ」と締めくくった。


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