[原子力産業新聞] 2007年9月13日 第2395号 <4面>

原子力機構 高エネ重イオンビームで 直径1μ以下を実現

日本原子力研究開発機構は、このほど高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設「TIARA」のサイクロトロンを使用し、数百MeV級重イオンで直径1ミクロン以下のマイクロビームの形成に成功した。半導体デバイスやバイオなどの分野でイオン照射利用を促進する技術で、こうしたマイクロビームの実現は世界でも初めてという。

サイクロトロンは静電加速器に比べビームエネルギー幅が10倍以上広く、レンズで集束してもエネルギーの違いでピントが合わず、数ミクロン以下のビーム径にできないという課題があった。

今回原子力機構は、@加速高周波電圧の波形を従来の正弦波から台形に近い形(フラットトップ加速)に変更Aサイクロトロンの磁場変動を従来の100分の1、10万分の1に抑えるコイル安定化技術Bレンズの主要要素である4重極電磁石の設置精度の向上技術――などを導入。最小直径0.6ミクロンで260MeVのネオンイオンのマイクロビームを生成した。

これまでイオンマイクロビームは数MeV程度のものが微小領域の分析などに使用されているが、数百MeVの重イオンのマイクロビームは物質中での到達深度が深い。このため、例えば半導体デバイスの耐放射性研究では、1個のイオンが動作に与える影響であるシングルイベント効果の高分解能での可視化、バイオ分野では、生きた1個の細胞にイオンを狙い撃ちし周囲の細胞への影響(バイスタンダー効果)を調べる研究などに、大きな貢献が期待できるという。


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