[原子力産業新聞] 2007年9月20日 第2396号 <3面>

フランス アレバを中心にエネルギー部門を強化へ 3社統合も視野に

フランスのN.サルコジ大統領がこのほど、同国のエネルギー産業の再編強化に向けた検討を、開始したことが明らかになった。詳細は明らかにされていないが、アレバを中心とするオール・フランス体制の巨大エネルギー企業設立を模索しているようだ。

11日の報道によると大統領は、アレバとメーカー大手のアルストム、建設大手のブイグを統合させることを視野に入れ、将来の原子力開発体制全般について、投資銀行のHSBCとコンサルティング会社のマッキンゼーに検討を委託したという。

大統領の広報官は、「フランスのエネルギー部門の将来についてさまざまなオプションを検討するというだけのことで、今すぐどうこうしようと言う話ではない」とコメントしている。しかし、ウラン探鉱から核燃料サイクルまで、原子力事業のワンストップ・ショップを目指すアレバにとって、欠けているのは、タービン製造能力と、大規模建設プロジェクトのマネージメント力と常々指摘されている。それらのノウハウを持つアルストムとブイグをアレバに統合させることは、フランスの原子力産業の強化にとって最も手っ取り早い方策であることは間違いない。

一方、アレバのグループ会社であるアレバNP社(旧フラマトム社)の34%株式を持つ独シーメンス社は、こうしたフランスの動きに警戒感を示している。2001年のアレバ発足時の協定によると、アレバは2012年にシーメンス社が所有するアレバNP株を買収することが認められているが、その場合、予め2009年に買収する旨を通告することが義務付けられている。シーメンス社は11日、「株主総会などで重要提案を阻止できる最低ラインの34%株式は堅持したい」との意向を強調している。

またA.メルケル独首相も10日に開催された仏大統領との非公式会談で、シーメンス社が引き続きアレバNP社に参画していけるよう要請したという。これに対し仏大統領は、ドイツの脱原子力政策の撤回を迫ったとの報道もある。

仏政府は今月3日に、仏ガス公社(GdF)とエネルギー・水道事業大手の仏スエズ社の合併を正式に発表したばかり。新しく発足する「GdFスエズ社」は、ガス、電気、水道事業などを幅広く手がける世界第4位、欧州第3位のエネルギー企業となる。今回、GdFスエズに続くさらなる再編強化の動きが出て来たことで、エネルギー部門における仏政府の支配力を維持しようという仏大統領の考えがより鮮明になってきた。

今後、フランスは、エネルギー分野での競争促進を進める欧州連合(EU)の規制当局と衝突することは避けられないだろう。


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