[原子力産業新聞] 2007年10月11日 第2399号 <4面>

理研と東大 微量のガンマ線を観測 冬の雷雲は粒子加速器

理化学研究所と東京大学は11日、「冬の雷雲は天然の粒子加速器」である証拠を見つけた、と発表した。

両者が新潟県の柏崎刈羽原子力発電所の構内で雷活動に伴って自然放射線が増える現象を調査した結果、今年1月7日の早朝に雷が発生する1分以上前より、上空の雷雲から10MeVのエネルギーを持ったガンマ線が40秒間にわたり放射される様子を観察することに成功したもの。理研中央研究所の土屋晴文・協力研究員、東大院物理学専攻の榎戸輝揚・日本学術振興会特別研究員らのグループによる成果。

降雨の際に、環境放射線が長期間にわたって増えることはよく知られており、また、日本海側で冬季雷の頻発する時期に、沿岸の原子力発電所構内に設置している放射線監視装置が、降雨の影響とは違う要因で放射線が短時間、増加する兆候は観測していたものの、その詳細は定かではなかった。

同研究グループは従来の装置に比べ放射線への感度が高く、飛来する放射線の種類や方向、エネルギーが分かる新型の装置を開発。この装置に周囲の光・音・電場も同時に測定できる機能を加え、昨年12月22日より観測を始めた。

その結果、この冬一番という強い低気圧が発達した今年1月7日の早朝、40秒間にわたって放射線量の増加を観測し、それが落雷発生の70秒ほど前より雷雲から放射されたガンマ線によるものと突き止めた。

このガンマ線は、雷雲中のマイナスの電気を帯びた電子が、雷雲の下部にあるプラスの電気の層に引き寄せられ、ほぼ光の速さにまで加速し、制動放射というメカニズムで発生すると結論づけた。今回のような雷雲から放射されたガンマ線を観測したのは、世界でもまれ。

この結果は、雷などによる放射線の増加減少の解明に貢献するだけでなく、いまだに謎が多い雷の発生メカニズムの解明や宇宙での粒子加速の仕組みの理解にも役立つと期待されている。


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