[原子力産業新聞] 2007年10月18日 第2400号 <4面>

原子力機構 核不拡散と原子力シンポ G8に向け国際議論喚起

日本原子力研究開発機構と日本国際問題研究所共催による「核不拡散と原子力の平和利用」シンポジウムが4日、東京・中央区の浜離宮朝日ホールで開催された。米国、ロシア、フランスの政府機関、国際原子力機関(IAEA)などを交えたディスカッションを通じ、来年のG8北海道洞爺湖サミットに向けて、核不拡散と原子力平和利用の包括的アプローチに関する国際的議論を喚起するもの。

核不拡散体制について、イラン、北朝鮮の核開発問題、非国家主体による関与なども含め、両国の原子力施設視察経験もあるJ.ウォルフスタール戦略国際問題研究所シニアフェローが現状を評価・説明した。これに対して、遠藤哲也・元原子力委員長代理は、各国の原子力開発を行う権利に言及した上で、NPTについては、脱退できない仕組みを間接的に作っていく必要などを述べた。この他、核燃料供給保証の国際的枠組み、米印民生原子力協力の核不拡散体制への影響についても、パネラーによる議論、参加者からの質疑が展開された。

一方、原子力平和利用については、D.ペコ米DOE原子力局企画・国際課長代理が、NRGエナジー社による原子力発電COL申請の動きを報告、場内からわき起こった拍手を受けて、同氏は「米国にとっての大きな変化」と称えた。ロシアからは、E.P.ベリホフ・クルチャトフ研究所総裁が、2050年頃のエネルギー消費量を現在の3倍と試算、その後もさらに伸び続け、石油価格の上昇、CO排出抑制の必要を背景に、供給源も模索できない「ブラックホール」が待ち受けるとの逼迫した予測を示した。

各国の発言を受け、内山洋司・筑波大学システム情報工学研究科教授は、化石燃料ピークに先立って、地球温暖化が今世紀末にも「極めて深刻な事態に」と警鐘を鳴らし、環境保全、経済性から「原子力が代替エネルギーとして優位」と結論付けた。また、今後、原子力発電導入を目指す国については、再処理、プルトニウム利用にはまだ至らぬことから、20年頃までは濃縮ウラン供給を効率よく保証することがポイントと述べた。

T.ラウフIAEA渉外政策調整部検証安全保障政策課長は、世界中で16億人が電気を利用できず、今なお24億人が牛糞などの燃料に依存している現状をあげ、途上国に原子力計画策定を支援する準備があることを強調した。


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