[原子力産業新聞] 2007年10月26日 第2401号 <5面>

小グループでのテーマ討議重視

日本原子力産業協会の方からデコミショニング(廃止措置)の講師にと勧められた。お隣の国だし、講義資料も今までに国際会議で使っている説明資料からピックアップすればいいと思い、軽い気持ちで引き受けた。早速WNU事務局から、講師用のインストラクションが送られてきた。読んでいくうちに、「しまった」と思った。とても出来合いの資料では通用しそうもないことに気付いた。

インストラクションの要点はこうだ。「一般的な情報は一切不要」、「個別の国やプロジェクトに特化しないでグローバルな視点で」、「内容説明ではなく講義の後に行われる小グループでのディスカションのためのテーマ提供型の講義とすること」――。要するに前段の講義はあくまでも、その後のグループ討議のための材料提供である。研修成果の歩留まりは後者の出来によることが大きいことを徹底させている。

午前8時から午前中が講義、午後は小グループに分かれて別々の部屋で、夕方までたっぷりと午前中の講義の中からテーマを選定して討議して、その結果をまとめ上げていく。毎日このパターンで、さまざまなテーマをこなして行く。

午前中に2つから3つの講義がある。1講義1時間のプレゼンテーションと20分間の質疑が1ユニットである。筆者のテーマはデコミショニングで、事務局のインストラクションに従って課題提示型に世界共通の課題とその背景を中心に進めた。実例としての東海発電所廃止措置プロジェクトを織り交ぜながら、廃止措置シナリオ、コスト、規制に重点を置いた。研修生は非常に積極的でやる気にあふれており、質疑も要点を突いたものが多い。「長期間を要するが技術伝承は大丈夫か?」、「デコミに携わる人間の士気はどうか?」、「長期にわたる費用はどのように確保されるのか?」、「デコミ費用は発電原価のどのくらいの割合か?」等々。デコミは長期間で多くのコストを要すること、各国でシナリオが異なること、廃棄物処分場の確保が共通の課題であることを認識してもらえたと思う。

午後は小グループに分かれての討議である。9人ずつ11グループがパソコンとプロジェクターを持ってホテルの別々の部屋に入る。各グループ毎に担当のメンター(指導教官)が付いている。先ず午前中に聴いた講義の復習をしながら、これから討議するテーマを抽出していく。いくつかの候補が出され最終的には多数決で討議テーマが選定される。したがってグループ毎にテーマが異なる。筆者もグループ討議をのぞいてみた。光栄にも多くのグループで筆者の講義から討論テーマが選定されていた。顔を出すと、早速つかまり追加の質問を受けるので、残念ながら全部の部屋は回れなかった。

討議を通して講義の内容を自分の言葉で語れ意見を交わすまでになる。同時進行でパソコンのキーがたたかれ、プロジェクターで映し出された討議の要点が確認され、意見が集約されていく。これがレポートに反映される。この一連のプロセスが終了後の研修成果の歩留まりを大きく向上させているのは間違いない。


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