[原子力産業新聞] 2007年11月1日 第2402号 <3面>

エジプト 原子力発電導入へ 大統領が正式発表

エジプトのH.ムバラク大統領は10月29日、原子力発電開発プログラムに着手することを正式に発表した。具体的には、「原子力発電導入に向けた上級審議会」を設置し、検討を開始する。なお米国は、即座にエジプトの原子力導入を歓迎するコメントを発表している。

大統領は、エネルギー源を多様化させることにより、石油やガス資源を将来世代のために維持させると指摘。同国初となる原子力発電所の導入について、エネルギー・セキュリティの観点から、「原子力発電は国家の安全保障を担う重要な一要素」とした。

そして、諸外国の協力や国際原子力機関(IAEA)の支援を仰ぎながら、核不拡散の観点から透明性を持った枠組みの中で、初号機を運開させる意向を明らかにした。

建設する基数や炉型、着工時期などの詳細については、一切言及されていない。また、今回の大統領の発表が、与党党大会の数日前というタイミングであったことから、「国威発揚のためのプロパガンダではないか?」と疑問視する向きもある。今後、新年度予算案に原子力発電導入関連予算が盛り込まれるかどうかが、大統領の“本気度”を測る指標となりそうだ。

エジプト原子力庁は2基の研究炉を所有・運転しており、20年以上前からエルダバ原子力発電所(PWR、93万6,000kW×2基)の建設計画を掲げている。IAEAが2005年2月に発表した報告書も、「エジプトの原子力研究開発は、核兵器開発およびウラン濃縮を目的としていない」と結論している。なおエジプトは、NPT加盟国である。

1986年のチェルノブイリ事故を受け、原子力発電導入計画を凍結させたエジプトで、計画が再浮上したのは昨年9月にさかのぼる。大統領の次男である与党国民民主党のG.ムバラク政務担当書記が党大会で演説し、ムバラク政権が原子力発電導入の検討を開始したことを明らかにしたのがきっかけだ。

同書記は「NPT加盟国であるエジプトは、原子力を平和に利用する権利を持つ」との立場を表明した上で、「政府は今後慎重に検討を進め、7〜8年内に原子力発電開発プログラムに着手する」との認識を示した。

その後エネルギー省のH.ユーネス大臣が原子力発電開発プログラムについて、今後10年内に15億ドルを投じて100万kW級の原子炉1基を完成させるとしていた。


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