[原子力産業新聞] 2007年11月8日 第2403号 <3面>

米国 新規炉建設での融資保証論争 ミュージシャンらが反対 「事実に反する」とNEI

米国で先月、ミュージシャン(ジャクソン・ブラウン、グラハム・ナッシュ、ボニー・ライトら)が反原子力団体と連携し、新規原子力発電所建設プロジェクトへの政府の融資保証に反対するキャンペーンを実施。米国のマスコミがそれを無批判に報道し、話題となった。

エネルギー省(DOE)が10月4日に発表した、「融資保証プログラムの最終規則」では、建設プロジェクトの全コストの最大80%までが保証される、と定められた。ミュージシャンらは従来通りの反原子力の主張に加え、融資保証プログラムを取り上げ、「新規原子力発電所の建設のために、無制限に国民の税金が投入される」と誤った事実認識に基づいて反対している。

原子力産業新聞では、彼らが反対している「融資保証」について二号にわたり、米原子力エネルギー協会(NEI)のR.マイヤーズ副理事長(政策担当=写真)の指摘を引用し、米国における原子力発電所建設の意義を再確認してみたい。

マイヤーズ副理事長は、「ミュージシャンらの主張は、事実誤認、単なる嘘で塗り固められたもの」と一蹴し、新規炉建設を促進する融資保証に反対することは、以下の5点から誤っていると分析している。

@消費者の利益に反する。融資保証があればこそ、建設コストを安く調達し、原子力発電所がより安い電力を提供することができる。そのため融資保証に反対することは、一般の電力消費者や、商業、産業部門の電力利用者を苦しめることになる。

A地球温暖化防止に反する。米電力研究所(EPRI)は、電力部門のCO排出量削減のためには、省エネ、CO回収・貯留、クリーン石炭火力、再生可能エネルギーに並んで、原子力発電利用が不可欠であることを示している。

B雇用確保と労働者の利益に反する。米国の労働者も融資保証の恩恵を受ける。新規原子炉一基を建設すると、建設時には平均1,400〜1,800人分の雇用(ピーク時は2,400人に達する)、運転時には400〜700人分の常勤雇用を創出し、さらに原子力発電所の従業員の生活を支える財・サービスを提供するために400〜700人の雇用(カーディーラー、ドライクリーニング、スーパーマーケットなど)を地域社会にもたらす。これらの数字を裏付ける多くの経済分析が行われている。

C製造業の利益に反する。米国の製造業者も、融資保証の恩恵を受ける。新規炉の建設によって、コンクリートや鉄鋼、さまざまな構成機器といった物資の需要が創出される。新規炉1基あたり、約10万立方ヤードのコンクリート(世界第2位の高さを誇るシカゴ・シアーズタワーの基礎と床版に使用されたコンクリート量の5倍)、6万6,000トンの鉄鋼、44マイルの配管、300マイルの配線、13万点の電気関連構成機器が必要になる。

D経済成長を阻む。米国で新規炉を建設しない場合、電力供給の安定性を確保し、経済成長を持続させるためには、より多くの天然ガス火力発電所の建設が必要になる。その結果、天然ガスの供給は逼迫し価格は高騰し、化学関連産業などにさらに打撃を与える。現に近年の天然ガス価格高騰に伴い、化学産業では、この5年間に10万人の雇用の機会が海外に流出した。住宅所有者にとっても、暖房に必要なガス価格が上昇する。

ミュージシャンらは明らかに、こうした事実に背を向けている。  (次号につづく)


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