[原子力産業新聞] 2007年12月13日 第2408号 <2面>

保安院 自衛消防・情報連絡WG 中越沖地震の報告書案まとまる アクションプラン作成へ

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の「中越沖地震における原子力施設に関する自衛消防および情報連絡・提供に関するWG」(主査=大橋弘忠・東大院教授)は7日、同WGの報告書「中越沖地震を踏まえ、原子力施設に対する地域の安全・安心に向けて」を取りまとめた。今後、最終版に向けパブコメに付すが、先立って原子力安全・保安院では、内容の具体化に向け、近くアクションプラン作りに着手する。

報告書案はまず、自衛消防体制の強化が必要とし、今回の変圧器火災を踏まえ、常時10名程度の初動要員が確保できる24時間常駐体制構築に加え、専門的知識を有する中核リーダー育成等により、初期消火体制の充実を求めた。消火配管・用水タンクは、震度6強〜7程度にも機能が維持できるよう、耐震強度・構造の改善を施すほか、化学消防車、水槽付きポンプ車等の配備により、消火設備の信頼性向上を図る。このほか、消防機関への専用回線や中央操作室内の衛星電話を設置するとともに、緊急時対策室や消防車両格納施設の耐震性の確保、石油コンビナート向けの実火消火訓練の実施など、総合的対策を講じ、消防関連設備の信頼性向上、自衛消防体制の有効性確保につなげることとした。

情報連絡・提供の改善策では、地震発生から1時間後を目途とした国による迅速なプレス発表、国・自治体・事業者の連携のもと、防災無線・地元ラジオ・携帯メールやHP・広報車・チラシや新聞広告・電光掲示板・CATVなどを駆使し、住民に対して繰り返し情報発信を行う。情報は迅速性優先の一方で、「後ほど変わりうる」といった留保条件も明示するほか、INES評価の利用等、わかりやすい表現方法に工夫する。

また被災地での情報提供体制不足の反省に立ち、初動時からの保安院幹部職員派遣、オフサイトセンター活用、災害時における原子力発電所からの情報収集システム構築など、現地での体制強化も図る。

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本報告書案の参考資料には、地震から約2週間後に、柏崎市住民500人に対し、民間調査会社のサーベイリサーチセンターが実施した情報入手に関するアンケート調査結果を添付した。

それによると、「地震直後、知りたかったこと」では、「余震の可能性や規模」が最も多く63%、次いで、「今回の地震の震源地や規模」59%、「原発についての情報」50%、「道路、通信、電気、ガス、水道」45%などとなっており、発電所の被害状況に対する情報ニーズがうかがえる。

地震当日の情報入手媒体では、ラジオが60%、テレビ50%、有線放送・同報無線46%の順。役立ったものでは、コミュニティFMラジオの「ピッカラ」が54%と最も高く、次いでNHKテレビ52%、防災無線50%、民放テレビ29%、NHKラジオ17%、警察・消防等16%、民放ラジオ11%だった。

「変圧器火災」、「放射能漏れ」、「想定外の揺れ」に関する質問では、いずれも、住民の認知経路はマスコミ報道が約9割と最も多く、また、約8割がこれら事象を「非常に重大なこと」と認識していた。


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