[原子力産業新聞] 2007年12月13日 第2408号 <4面>

原子力機構が高性能顕微鏡開発 原子炉材料の劣化診断に

日本原子力研究開発機構はこのほど、世界最高レベルのビーム収束度を持つ走査型陽電子顕微鏡を開発(=写真)、高温高圧水中で応力腐食割れが生じたステンレス鋼を観察し、亀裂より先端部分において、原子空孔が存在することを世界で初めて発見した。今後、原子炉材料や燃料被覆材料などの劣化診断に適用する。

陽電子は物質中の電子と結合するとガンマ線を放出して消滅するが、これを利用することにより、物質を構成する原子が欠損した原子空孔を高感度に検出できる。

しかし原子空孔の評価を行うためには、陽電子ビームの直径をμmレベルに収束する必要があり、同ビームの収束度の低さが実用化への課題となっていた。

原子力機構は放射性同位元素のナトリウム22を用いた小型線源を開発するとともに、陽電子のエネルギーを揃える(単色化する)減速材に効率の高い固体ネオンを採用。また走査型電子顕微鏡の光学系を適用することで1.5×1平方メートルの小型で直径1.9μmのビーム収束度を達成した。


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