[原子力産業新聞] 2007年12月13日 第2408号 <4面>

新刊抄 「欧州原子力と国民理解の深層」福澤義晴著

原子力という巨大技術の研究開発の歴史は、その生まれた経緯からしても、その後の各国でたどった道は紆余曲折を経ることになる。

日本でも研究開発の段階から実用化の域に達した73年に、第1次石油危機が発生し、原子力発電への期待がいやがおうにも高まり、世界的にも急拡大の様相を呈した。しかしその後、TMI事故、チェルノブイリ事故と続き、世界的な停滞期を迎えることとなる。

著者は言う――「原子力発電技術は、戦後間もなく登場して以来、すでに半世紀以上もの時間が経過し、かつ世界の先進諸国の基幹電力の一部を支え続けてきているにもかかわらず、その技術に対する評価や国民理解が定まらず、今もって同じ原子力発電という技術に対して賛否両論が世界の国民世論の中に存在する」。二大事故の発生によって、原子力発電反対の機運が加速拡大していったが、その反対機運が、国民のマジョリティーにまで拡大したドイツと、そうはならなかったフランスに代表されるような国々があるのは、なぜか――この国民の多様性を深層にまで迫って解き明かそうとしているのが本書だ。キーワードは“民主主義”と“段階的な政策”。

著者は、現役の原子炉安全研究者、福澤義晴氏。

郁朋社刊、1,500円(税別)。


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