[原子力産業新聞] 2008年1月7日 第2410号 <3面>

米国 DOEの長期エネルギー見通し 原子力発電拡大傾向が続く

米エネルギー省・エネルギー情報局(DOE/EIA)はこのほど、2030年に至る米国のエネルギー需給を予測した「2008年版エネルギー見通し」(AEO2008)を発表した。AEO2008では、2030年の原子力発電設備容量は、前回の2007年版見通し(AEO2007)から上方修正されている。

AEO2008(標準ケース、以下同)によれば、米国のエネルギー消費量は2006年の100兆BTU(英国熱量単位)から年率0.9%で増加し、2030年には123兆7,600億BTUに達すると予測されている。今回、2030年のエネルギー消費量は前回見通しから7兆4,000億BTU下方修正された。これは、@原油および天然ガス価格の高騰A経済成長およびエネルギー需要を若干低く見積もったこと――などが原因だという。そのため、エネルギー消費に伴う米国のCO排出量は、2006年実績の58億9,000万トンから、2030年には73億7,300万トンに達すると予測されており、前年度見通しよりも5億7,700万トン低減されている。

一方、原子力発電についてAEO2008は、2030年の米国の原子力発電設備容量は1億1,880万kW(2006年実績は1億20万kW)に達するとし、AEO2007の予測(1億1,260万kW)を上方修正した。

2005年版以前の同見通しでは、原子力発電所の新規着工件数はゼロと予測されていたが、米国の原子力ルネサンスの流れを反映し、2006年版以降、毎回上方修正されている。特にAEO2008では、原子力発電所の新規建設分を2,000万kW(AEO2007から63%増)と予測。既存炉の出力増強分は270万kW、既存炉の閉鎖分は450万kWと見込んでいる。

AEO2008は、原子力発電設備容量の増大に伴い、原子力発電電力量は、2006年実績の7,870億kWhから2030年には9,490億kWhに拡大するとしたが、総発電電力量に占める原子力シェアは、2006年実績の19%から2030年には17%に低下すると予測している。これはAEO2008が依然として、石炭火力発電の大幅な拡大を盛り込んだ内容になっているためだ。

AEOは、作成時点でのエネルギー・環境政策をベースにとりまとめているため、AEO2008でも、今後米国で導入が予想される気候変動防止のためのCO排出対策等は一切考慮していない。そのため、2006年は3億520万kWだった石炭火力発電設備容量が、2030年には4億2,230万kWへ拡大すると予測されている。


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