[原子力産業新聞] 2008年1月10日 第2411号 <2面>

日立の陽子線がん治療システム 米FDAの認可取得

日立製作所はこのほど陽子線がん治療システムの治療性能を向上できるスポットスキャニング照射技術を開発し、この技術を採用した同システムとしては、世界で初めて米国食品医療品局(FDA)の販売認可を取得した。同社は近く日本でも薬事法に基づく医療機器の認証を厚労省に申請する予定。

この技術は世界最大級のがんセンターであるテキサス州立大学付属MDアンダーソンがんセンターの陽子線治療センター向けに開発した。同センターは06年5月から治療を開始、回転ガントリー付治療室3室、固定照射室1室を有する。スポットスキャニング照射技術は回転ガントリー付治療室の内の1室に採用されており、今回、FDAの認可を取得したことから今春以降、商用としては世界で初めて本格治療を開始する。

同技術は、がん患部を照射する陽子線のビームを従来方式のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用いることが特徴。複雑な形状のがんでも、その形状に合わせて陽子線を照射でき、正常な細胞への影響を最小限に抑えられる。

従来、細いビームのままではビームの均一な保持や制御が困難なため、ビームを散乱させ複数のフィルターで患部形状に合わせる方法を採用してきたが、同社では均一な品質を持つビームを取り出す技術や高精度の制御技術を発展させ、実用化した。


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