[原子力産業新聞] 2008年1月10日 第2411号 <3面>

特集 フランス 放射性廃棄物処分 将来世代にバトンを クロード・ビロー議員に聞くA

(前号につづき)

進め方について

――日本では地層処分に関して、「必要性と安全性の理解だけを進めればなんとかなる」という認識が強いと考えるが、なぜフランスではそのように考えず、3つのオプションを並列して研究開発を進め、15年後にそれらを総括し、決めるという発想、施策に至ったのか。

ビロー議員 我々も当初はそのように考えた。しかし、それだけではフランス国民が納得しなかった。一般市民にとって、HLWが有する100万年という時間軸の長さはなかなか理解できない。国民の信頼を得るためには、色々な味付けをする必要がある。地層処分場を引き受けてくれる地方には、経済的恩恵もさることながら、反対派が言う「核のゴミ捨て場」という意見に対する反論として、科学的にも重要な施設であり、立地した地方が誇りや自信を持てるような施設であることを示さねばならない。実際、ビュール地下研に関連して、40件もの博士論文や200件もの技術レポートがこれまで発表されている。ビュールが単なるゴミ捨て場ではなく、科学的にも高貴な使命を持ち、誇りを持てる施設であることを示すよう、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)に常々要求している。

――フランスの進め方は、1つの概念に絞るのではなく、複数のオプションを持ちながら地層処分を確実に進めるという柔軟性に富んだ進め方であり、日本の進め方とは違うが、それは国民性に由来するものか。

ビロー議員 そうとも言えない。フランスの場合、中立的立場で裁量するOPECSTの存在、役割が非常に大きかった。またANDRAは、オープン・デイを設け、一般市民に地下研究所を開放するなど、一般市民の関心をひくような活動を実施している。また関連地域の地方議員を実際に、地下研究所の一番下まで案内するなど、工夫を凝らしている。

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国民との対話

――国民との対話は、具体的にはどのように実施したのか。

ビロー議員 バタイユ法で、地方議員のほか、様々な市民団体、組合、大きくこの3つの要素からなる「地域情報委員会」(CRIS)が設立された。各原子力施設に、CRISが設置されている。それまでにもCRISと同じような委員会が既に存在していたが、プレフェ(官選知事・内務省管轄)が議長を務めていた。CRISでは、地方議員が議長を務めることに変更した。このことは、フランスにとって、大きな意味があった。また、市民参加型のデモクラシー(国民のできるだけ幅広い層をとりこんだ形での議論)については、公開討論国家委員会を組織し、全国各地で公開討論を開催。議論を戦わせ、国民の総意を探った。社会から受容されることは、非常に重要だ。

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将来世代への配慮

――日本では、「地元さえ了解すれば良く、将来世代に対する配慮という難しい話は不要だ」という意見もあるが。フランスではどのような認識か。

ビロー議員 そもそも再取り出しは、“将来世代に可能性を残しておく”ということから生まれている。再取り出し期間を100年以上と設定したこと自体、将来世代の選択に対する配慮そのものだ。処分問題は、現世代のなかでクローズして考えるのではなく、将来世代にわたってバトンを繋ぎながら解決していくものだ。

(つづく)


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