[原子力産業新聞] 2008年1月17日 第2412号 <1面>

池田機構長 ITER建設に着手 「産業界の貢献 不可欠」

人類が求め続けて来た究極のエネルギー、その実現に一歩近づく国際熱核融合実験炉(ITER)の実施機関「イーター国際核融合エネルギー機構」が実働を開始した。国際機関のトップとして、廃止措置まで数十年にわたる長期巨大プロジェクトを率いる池田要ITER機構長に聞いた。

――昨年10月に七極による同機構設立協定が発効し、同11月末には第1回理事会開催にまでこぎつけた。今後の計画は。

池田機構長 06年3月の仏カダラッシュに着任当時は総勢8名でのスタートだった。いまは約200名に達し、春までには300人にする。まさに組織、人材確保ともにゼロからの立ち上げだった。

さまざまな研究課題に対する設計の見直しも一段落し、技術面では一区切りだ。

6月に理事会を青森で開く。それまでに今後の詳細スケジュール、経費の見積もりを行わなければならない。

――具体的には。

池田機構長 現地では整地作業が始まっており、10年には事務棟が完成する。いよいよ日本も大型コイルの製作段階に入る(前号既報)。建設に10年、運転を20年、除染に5年をかけ、その後、廃止措置のためにホスト局のEUに引き渡すまで、数十年の長期プロジェクトだ。

――ITER機構は分かりやすく言うとどのような国際機関か。

池田機構長 国際原子力機関(IAEA)をモデルに組織作りを行い、理事会を支え、組織内に7部門を設けた。

今後、機器の予定価格などを設定し、調達契約を結ばなければならない。大きく異なる点は、大型の最先端装置を実際に作り上げ、運転・研究を長期にわたって行い、成果を挙げていかなければならない点だ。

――日本に期待することは。

池田機構長 日本は機器製作の約2割を期待されている。基本的に機器は各国から物納され、それを組み立てて工程管理し、性能を確認することが求められる。軽水炉などの大型プラントを作った経験を積んだ技術者がぜひとも必要だ。できれば、建設から運転までやってほしい。

部材や機器の調達は国際競争入札になるが、企業経営トップには最先端技術の獲得、人材育成も含めた長期的投資をぜひ積極的にお願いしたい。

七極の中には予算獲得に苦労しているところもあるが、日本政府には国際約束したことはきちんと守って頂くことを期待したい。

日本の学会、産業界などからは、フランスは遠いと感じるかも知れないが、ぜひ関心を持って積極的に支援してほしい。

――ITER以降の展望は。

池田機構長 ITERは科学技術的実証プラントで、発電は行わないが、材料の耐久性などの課題はあるにしても、多くの課題を解決して次の工学的実証プラントに向けて、成果をつなげて行きたい。それが、欧米だけでなく中国やインド、韓国も七極に入っている理由ではないか。

池田要(いけだ・かなめ)氏 68年東大原子力工学科卒、旧科技庁入庁、核燃料課長、原子力安全局長、研究開発局長、科学審議官などを歴任。01年旧宇宙開発事業団理事、03年駐クロアチア大使、05年ITER機構長予定者に選任、07年11月27日からITER機構長。


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