[原子力産業新聞] 2008年1月17日 第2412号 <2面>

英国 原子力発電所新設に向け加速 政府が積極推進に転換

英ビジネス・企業・規制改革省(BERR)は10日、新しい原子力政策(白書)を発表した。@既存の原子力発電所のリプレースA民間事業者が原子力発電所建設プロジェクトを実施するための環境整備――を盛り込み、従来の原子力に対する消極的な姿勢から、積極的な原子力推進へ大きく舵を切った。またBERRは同日、新規に建設される原子力発電所のデコミ費用等について盛り込んだ、エネルギー法案も発表。英国における新規建設プロジェクトをめぐる動きが、一気に加速し始めた。

J.ハットン・エネルギー担当大臣は声明の中で、「クリーンで安全、低コストな原子力発電所の新設は、英国にとって長期的見地から不可欠。民間事業者に、新設プロジェクトを推進するよう働き掛けたい」と強調。新規建設に向けた手続きを早急に開始し、民間事業者が2013年頃をメドに初号機を着工。2018年までに初号機が運開するとのタイムスケジュールを示した。

そのほか原子力白書には、新設促進策として、@今年2〜3月をメドに、事業者が負担する新規原子力発電所のデコミ費用と、発生する放射性廃棄物の処理・処分費用についての指針を示すA独立諮問機関を設立し、デコミ費用等の事業者の資金計画を評価するB包括的設計審査(GDA)を円滑に進めるため、原子力施設検査局(NII)スタッフを増員するC新設プロジェクトを国家インフラ事業として扱い、迅速な手続きを可能にするよう法体系を整備するD今年3〜4月をメドに、新設サイトに関する戦略的サイト評価(SSA)の評価基準を提示し、新設可能サイトを絞り込むE今春までにGDA対象4炉型を3炉型に絞り、より詳細な検討を実施するF欧州連合(EU)加盟国と協力し、原子力など低炭素電源が有利になるよう、EUの排出権取引スキームを強化する――等が明記されている。

一方、同時に発表されたエネルギー法案は、昨年5月に貿易産業省(BERRの前身)が発表したエネルギー白書を具体化するもの。同法案では、@COの回収・貯留(CCS)の技術開発支援A総発電電力量に占める再生可能エネルギーのシェアを、2015年までに現在の3倍、15%に拡大――などとともに、原子力発電所を新設する事業者が、デコミ費用および発生する放射性廃棄物の処理・処分費用に関し、適切に積み立てることを義務付けている。

英国ではこれまでに、@カナダ原子力公社(AECL)のACR1000(120万kW)A仏アレバ社のEPR(160万kW)B米GE日立ニュークリア・エナジー社(GEH)のESBWR(155万kW)C米ウェスチングハウス社(WH)のAP1000(110万kW)──の4炉型が、GDA対象として規制当局に申請されている。

各炉型の供給者は、それぞれ電力会社の協力を取り付けており、ACR1000にはブリティッシュ・エナジー社(BE)が協力。EPRには、BE以外にも仏電力公社(EDF)、仏スエズ社、独Eon社、独RWE社、スペインのイベルドローラ社などが協力。ESBWRには、BE、RWE、イベルドローラ社などが協力。AP1000にはBE、Eonなどが協力している。

エネルギー白書を補完する形で、昨年5月に発表された「原子力発電所の新設に関する評価報告書」は、建設サイトとして既存の原子力発電所サイト(全14地点)を候補に挙げた。そしてスコットランドおよびウェールズの両地方政府が原子力発電所の建設に否定的であることや、大型の原子力発電所建設にともなう送電系統への投資規模などの観点から、ヒンクリーポイント原子力発電所サイトおよびサイズウェル原子力発電所サイト(=写真)が最適と指摘している。


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