[原子力産業新聞] 2008年1月17日 第2412号 <4面>

新春特別座談会 洞爺湖G8サミットへの道標 ――「原子力と向き合う」
原子力発電グローバル化 新時代の幕開け
世界同時発展を可能に
温暖化防止・エネルギー安保を両立

(2)グローバル化急進展と安全確保・核不拡散
世界の原発基数「倍増」へ平和利用の枠組み再構築

司会 それでは、議題2に移ります。世界では「原子力ルネサンス」が加速、また、途上国でも原子力発電の新規導入を公式に表明する国が相次いでいる。しかし、今後、100〜200基という単位で中小途上国まで含めて原子力発電所が新規に建設されるとなると、原子力安全確保や核不拡散面のリスクが高まる。原子力発電グローバル化の急進展の読み方と課題、日本の役割について甘利大臣のお考えを伺いたい。

甘利 ウラン資源は、現状のワンススルーで燃料を使い捨てにすると利用限度は八十数年と言われているが、これを再生利用していけばどんどん寿命が延びる。先ほどからお話があるように、FBRが技術的にも確立され普及していけば、利用限度は1000年単位で飛躍的に伸びると言われているから、有限な資源をフルに活用していくという方向に技術が一層進展すれば、原子力は世界の電源のベースロードになり得ると思う。それに、先ほどから申し上げているように、地球環境保全という点でも、もう原子力に頼るしかない。長期的にはいろいろな新しいエネルギー技術も出てこようが、中期的スパンでは原子力を主要プレーヤーにするしかないことが、技術者、科学者の間で共通の認識になりつつある。

その中で大事なことは、原子力技術は元々、核保有国の独占的な支配下にあったもので、これから核保有国以外にも広げていくのには、核不拡散、つまり原子力の平和利用に徹することが必須要件で、この核不拡散と原子力安全の2つが極めて重要となる。原子力というのは、自国がいくら安全であっても他国で起きた重大事故が自国の操業にかかわってきてしまうので、自国の原子力が安全・安心であることと同時に、他国の原子力も同等の安全・安心を確保してもらわなければならない。

これを、これから新規導入する途上国も含め核不拡散と原子力安全に関する体制の整備について、国際原子力機関(IAEA)とも協力しながら、原子力先進国が連携して、平和利用に関して途上国に協力していくことが大事だ。協力の内容には、人材育成や法制度整備も含まれる。特に、これから原子力発電所を導入する国が濃縮から再処理まですべて勝手にやらせてほしいということになれば核拡散の不安が高まるから、きちんと平和利用に徹するような仕組みができていなければならない。そこにIAEAと原子力先進国がどうかかわっていくのかが課題。つまり、自国で濃縮なり、再処理なり、核燃料サイクルにかかわることができないとしたら、どういう方法で燃料供給保証をしてくれるのかという問題は、当然、原子力発電所を立地する国からの要求となろう。日本を含めた先進国間の協力で、安定的なベースロード電源としての機能が将来にわたって果たしていけるような安心体制を築いていくことが肝心だ。具体的な方策は、これから話し合われていくことだと思う。

一方、日本はIAEAの査察を優等生として受け入れているので、米国が主導するGNEP構想の中で、日本は核保有国でないにもかかわらず平和利用に関する主要プレーヤーの一員として期待されている。私は、昨年はじめに米国を訪問、「日米原子力エネルギー共同行動計画」締結に合意してきた(その後、昨年4月に締結)。米国は、原子力の平和利用に関しては長期間停滞したため、技術者はいるのだろうがプラント建設の経験がない。つまり、医者はいるが、執刀経験が十分でないのと同じ状況だ。幸い日本は医者もいるし執刀経験もあるので、日本が協力しない限り、米国の「原子力ルネサンス」は、絵に描いた餅に終わるだろう。

こうした背景があって「日米原子力エネルギー共同行動計画」に合意したのだが、これが極めて大きな意味があるのは、米国はこれを契機に六ヶ所村での核燃料再処理を含めて、日本の核燃料サイクルについて真正面から承認したということにほかならない。今まで米国は、日本の核燃料サイクル推進を事実として認識しているという程度だったが、今回さらに積極的に評価した。これは、日米の原子力の歴史上の大きな転換点になったのだが、一般的にはあまり認識されていないようだ。以上のような点を踏まえ、日本が世界の原子力の平和利用に極めて重要な役割を果たす主要な一員として、国際社会が認知しつつあると思っている。


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.