[原子力産業新聞] 2008年1月17日 第2412号 <5面>

新春特別座談会 洞爺湖G8サミットへの道標 ――「原子力と向き合う」
原子力発電グローバル化 新時代の幕開け
世界同時発展を可能に
温暖化防止・エネルギー安保を両立

(3)国家戦略・ビジネスとしての原子力

司会 まさに今のお話は、次の3番目の議題につながるかと思います。日本は今、甘利大臣を先頭に「原子力立国計画」を掲げて、その着実な具体化に取り組んでおられるが、地震とか廃棄物処分問題等でこの政策がぶれるようなことはないのか、まずそこからお話しいただきたい。

甘利 「原子力立国計画」を策定した意義は、「中長期的にぶれない原子力政策」にあり、その一言に尽きる。2030年以降も、原子力発電の総発電電力量に占める比率を30%から40%以上にすることを目指して、原子力を基幹電源として位置付け、核燃料サイクルを含めて推進していくことだ。確かに中越沖地震は想定を超える出来事だったが、最大規模の直下型とも言えるような地震に見舞われても、日本の原子炉は基本的な安全の3要素、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」がしっかりと機能し、安全が確保されたことは、IAEAも柏崎刈羽原子力発電所の調査に来て表明している。また、今回の3倍のエネルギーの地震に見舞われても、この安全の3要素はしっかり確保されるという実験結果もある。

このことは、他の国、これから原子力発電を導入しようとする国の大臣が来日するときに、「日本の原発施設の安全性が確認された事態でもある」ということを説明している。安全が大前提の原子力推進だから、日本のみならず、造るときの安全性とオペレーションの安全性の両方について、世界が日本の知見を共有するということが大事なので、私は日本でいろいろな事象が起きるたびに、IAEAと密接に連絡をとり、世界中の安全に関する情報を世界の原発推進国が共有するということが大事だということを言い続けてきており、今回の地震の知見も世界に共有してもらいたい。

司会 一方、ロシアは原子力を国家戦略の主軸に据え核不拡散問題さえビジネスチャンスと捉え、フランスもサルコジ大統領主導で、原子力のワンストップショップ・統合国策会社設立を意図、世界市場で原子力ビジネス外交に余念がない。日本の官民一体体制の強化も含め、甘利大臣はどのようにお考えですか。

甘利 日本は、今までは官民一体となった明確な体制がなかなか打ち出せず、民間事業者の努力に期待するという形が続いてきた。しかし、原子力はそれでは立ち行かないと思う。官民一体となった姿勢がなければ、例えば国内的にも、国民に対して安全は供給できても安心がなかなか供給できない。後ろ盾に国がいるということは、「安全」にプラスして「安心」の供給になる。原子力推進は、安全だけではなかなか進展せず、安心を供給していかないと、住民の理解がなかなか伴わない。その意味で、官民一体となり、民が主要プレーヤーだが後ろ盾として官がそばに立っているという体制が必要であり、そういうメッセージが必要だ。


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