[原子力産業新聞] 2008年1月31日 第2414号 <2面>

北海道・洞爺湖サミットに向けての政策提言(2) 「持続可能な未来のための原子力」 日本国際問題研究所 タスクフォース座長 遠藤 哲也 氏

(3)不拡散努力の強化

提言5 追加議定書を活用する。

@追加議定書の普遍化を追求する。

A追加議定書の批准を原子力分野の国際取引の条件とする。

原子力供給国グループ(NSG)は、追加議定書の批准を核関連物質や技術の提供の追加的な条件とすべきである。もしそれが困難な場合、少なくともG8諸国は自主的に同様の宣言をすべきである。

提言6 不拡散の促進と原子力の便益を享受する手段として燃料供給保証と核燃料サイクルに対する多国間アプローチを活用する。

@信頼性のある供給保証が効果的な多国間メカニズムにとってカギとなる。

核燃料サイクルを持たない国に対する核燃料の供給保証は、国際社会における不拡散規範と慣習の形成に重要な役割を果たす。NPT第4条下においては、供給保証メカニズムへの参加を義務付けることは困難であるが、同メカニズムは、核燃料サイクル保有を選択しないことを促すための現実的な政策選択肢の1つである。

A多国間メカニズムは、新しい「核の『持てる国』と『持たざる国』」を作るものであってはならない。

現実として、各国の核燃料の供給はすでに国際的な相互依存体制に組み込まれている。多国間メカニズムの確立は、いくつかの国にとっては燃料調達方法の多様化を意味する。また、多国間化は、各国の国産のプログラムが軍事転用されないことを保証する役割も果たし得る。

ただ、現在機能している市場メカニズムを歪めることがあってはならないし、また原子力の平和利用の便益の享受において、新たな「持てる国」と「持たざる国」の差別を作るものであってはならない。そして、このメカニズムは、単に濃縮だけでなく、核燃料サイクルのすべての過程に注意を向けるべきである。

(註)多国間メカニズムと核燃料の供給保証にコミットするからには日本の核燃料サイクルも国際化すべきであり、少なくともアジアを念頭に置くべきであろう。再処理にしろ、濃縮にせよ、一国完結主義では今後国際的にやっていけないであろう。

提言7 燃料サイクルのバックエンドに関する懸念に対処する。

多くの国で使用済み燃料の管理の問題に直面しているが、この懸念への取り組みについて検討していくことが必要である。また、バックエンドの管理、とりわけプルトニウムの貯蔵については核セキュリティや不拡散の観点からも重視すべきである。回収ウランについては資源の効率的な利用という観点も重視すべきである。そうした観点から、プルトニウムや回収ウランの燃焼も含めその処分方法を検討すべきである。

(註)日本はプルトニウムの保有、貯蔵については「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則の下に細心の注意を払うべきである。

提言8 不拡散分野における強制と執行メカニズムを強化する。

@NPT体制の補完的措置を強化する。国連安保理決議1540やPSIの強化。

ANPT脱退の条件を設定する。

B強制のためにIAEAと国連安保理のリンケージを強化する。IAEA憲章の不遵守の場合、国連安保理は毅然とした対応をすべきである。

C多国間の枠組みを通じた対話と、インセンティブ、そして強制の適切な組み合わせが重要である。

提言9 核拡散抵抗性の高い技術や洗練された保障措置や検証技術の開発のために国際的な協力を深化・拡大する。

(4)核の脅威の削減

提言10 核軍縮を強調し、核兵器の廃絶という人類にとって重要な目標のために軍縮の重要性を再確認する。

NPT上認められた核兵器国であれ、事実上の核兵器国であれ、核兵器を保有するすべての国は、核の脅威を削減していく重い責任を持ち、核の廃絶に向けて更なる軍縮努力を行うべきである。特に、米ロが、START I・SORT後の軍備管理交渉を積極的に進めることで、他の核保有国の核軍縮努力をも促すことになるよう期待する。

(註)原子力の平和利用を促進する為には、核不拡散の強化が不可欠であり、そのためには核軍縮をさらに進めることが不可欠である。NPTの3本柱を強調している。

提言11 核不拡散のために安全保障上のインセンティブに取り組む。

上記の目的のために、核保有国は、安全保障政策において核兵器の役割を減少させるための方策を取るべきである。それには、他の大量破壊兵器の廃棄も含まれる。

また、信頼醸成のために、軍事ドクトリンや原子力発電計画を含む、軍事用ならびに民生用の核関連活動についての透明性を向上させることが重要である。

(註)米国の識者の中にもこのような考えが出て来ていること、キッシンジャー、ナン、シュルツ、ペリー4氏の見解は注目に値する。

提言12 CTBTの早期発効とFMCT交渉の開始をめざす。

CTBTの早期発効ならびにFMCTの交渉の早期開始に強く期待するとともに、核実験のモラトリアムの継続と、核分裂性物質の生産のモラトリアムをすべての核保有国に強く求める。

提言13 核テロや核物質防護の懸念への取り組みにおける国際的な努力を強化する。

国際社会は、核テロ防止条約や核物質防護条約等の国際的な条約や取り決めのもとに協調し、核テロの脅威に立ち向かうべきである。

G8グローバル・パートナーシップは、協力の対象国と対象分野を拡大すべきである。核テロ対策(もしくは核セキュリティ)において支援の必要な国に対する協力を提供したり、国連安保理決議1540履行のための支援を提供するためのチャネルとして活用されるべきである。

また、核セキュリティや物理的防護に関する情報やベスト・プラクティスについて友好国間で共有を進めることが重要である。 (了)


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