[原子力産業新聞] 2008年1月31日 第2414号 <4面>

チェルノブイリ事故から20年 健康調査報告、心理面にも言及

放射線影響協会は15日、東京国際フォーラムで、「チェルノブイリ事故の健康影響調査20年」と題するシンポジウムを開催、国際機関での調査に携わった国内外専門家より報告を受けるとともに、今後の検討課題に向け討論した(=写真)。

チェルノブイリ事故後20年となる昨年、IAEA、WHOなどの国連機関およびベラルーシ、ロシア、ウクライナからなる「チェルノブイリ・フォーラム」により、事故影響に関する最終報告書がとりまとめられた。今回シンポでは、その健康影響調査概要について、長瀧重信・日本アイソトープ協会常務理事らが説明するとともに、現在までに得られた知見が報告されるなどした。

生体資料・患者データの登録・保存を目的に99年に設立された「チェルノブイリ甲状腺組織バンク」では、現在までに2,500例もの甲状腺腫瘍組織登録がなされ、人類遺産として放射線被曝後障害研究に寄与していることを、伊東正博・国立長崎医療センター研究検査部長が報告。一方、チェルノブイリ事故の心理的影響に関する疫学研究について、錬石和男・放射線影響研究所臨床研究部副部長が紹介、@環境・健康・社会心理学的影響の総合的対策A被災者の精神的・経済的自立の支援B正確な情報提供を行い放射線に対する誤解・偏見を払拭する仕組み――の必要をあげた。

この他、海外からは、A.ブービル米国立衛生研究所上級研究員、M.マキシートフ・ロシア医学アカデミー放射線疫学登録センター次長が、除染者および公衆の被曝線量評価、疫学的研究に対する考察について、それぞれ報告した。


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