[原子力産業新聞] 2008年2月7日 第2415号 <3面>

米仏各勢力が対決 南アへの軽水炉供給プロジェクトめぐり

南アフリカ電力公社(ESKOM)が計画する新規原子力発電所建設プロジェクトへの入札が1月末に締め切られ、同社から入札を要請されていた仏アレバ社と米ウェスチングハウス・エレクトリック社の2社が応札した。新規プロジェクトは軽水炉が採用されるが、南アフリカの産業力強化も視野に入れたプロジェクト提案が求められている。

昨年11月にESKOMが両社に要請した入札案件は、@2010年をメドに合計出力300〜350万kW規模の軽水炉を建設準備A2025年をメドに合計出力2,000万kW規模の軽水炉を建設――の2件。それぞれの応札期限は、1月31日、2008年末に設定されていた。

1月31日に発表されたアレバ社の声明によると、同社は南アフリカのエンジニアリング会社AVENG社、仏建設大手ブイグ社、仏電力公社(EDF)とコンソーシアムを結成。第1の案件に関し、2基のEPR(出力各160万kW規模)建設を提案。第2の案件については、さらに10基のEPR建設を提案する方針だという。

アレバ社は旧フラマトム社時代、南アフリカで唯一運転中のクバーグ原子力発電所(PWR×2基)を建設した実績がある。またアレバ社は2006年11月、同発電所への各種サービスを提供するレセディ・ニュークリア・サービシーズ社(南アフリカの黒人支援プロセス「BEE」対象企業)の51%株式を取得し、傘下に収めている。また昨年7月には、カナダと南アフリカに事業拠点を持つウラン探鉱会社ウラミンの買収を完了。南アフリカの上流部門も押さえ、同国での地歩を着実に固めている。

一方、ウェスチングハウス社も1日に声明を発表。南アフリカのエンジニアリング会社マリー&ロバーツ社、米建設大手ショー・グループとコンソーシアムを組み、2016年の初号機運開を目指し、3基のAP1000(出力各110〜120万kW規模)を建設することをESKOMに提案したことを明らかにした。

ウェスチングハウス社もアレバ社に対抗し、昨年7月に南アフリカのエンジニアリング会社ISTの原子力部門を買収。南アフリカでの事業基盤とし、同国への技術移転を積極的に進める姿勢を示した。同時に、韓国、スペインなどにおける、ウェスチングハウス社によるこれまでの技術移転実績を強調している。

昨年7月に発表された決算によると、ESKOMの税引き前利益は11億3,600万ドル。同国の急激な経済成長にともない、同社の投資計画は加速を余儀なくされている。発電設備容量の不足だけでなく、送電網の脆弱さも指摘されている。

石炭資源に恵まれた南アフリカでは、総発電電力量の9割以上を石炭火力発電でまかなっている。しかし需要が増加傾向にあるのは、ケープタウン近郊や東西沿岸部で、需要地近接立地が可能な原子力発電所に注目が集まっている。


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