[原子力産業新聞] 2008年2月28日 第2418号 <1面>

柏崎市で耐震安全性国際シンポ開催 地震の知見を国際共有 耐震安全性に強い関心 新たな基準地震動策定し評価へ

日本原子力産業協会、日本原子力技術協会、電力中央研究所の三者は26、27日の2日間、新潟県中越沖地震で影響を受けた東京電力の柏崎刈羽原子力発電所に関連して、地元柏崎市の産業文化会館で、「原子力発電所の耐震安全性・信頼性に関する国際シンポジウム」を共催した。地元住民にも公開し、日本を含む10か国・地域から約500名が参加した(=写真)。

主催者を代表して白土良一・電中研理事長が開会挨拶し、「今回の地震の知見や教訓を国内外で共有し、より安全な原子力発電所作りをめざしたい」と述べ、世界のエネルギー状況や環境問題を考えると、「原子力発電は地球を救う可能性があると言っても過言ではない」と強調した。

来賓挨拶として地元の会田洋・柏崎市長は、「市民は国策に協力しているという誇りと、その恩恵を受けながらも、何かことあるごとに、発電所の安全は大丈夫かどうかということが最大の関心事」と指摘、@地震評価結果の公開A活断層を含めた地質・地盤の調査B新耐震設計審査指針の見直しの要否の検討――を求めた。

品田宏夫・刈羽村長は「人類の英知を結集して開くシンポジウムと受け止めている」とした上で、「市民は専門家の皆さんの判断に任せる部分が多い。分かりやすい説明をしてもらい、ゴクンと飲み下せることができれば、信頼関係ができると考える」とし、「自然にはかなわないとの謙虚さを持ち、自然との調和、自然の脅威をうまく受け流す知恵を持って対処してほしい」と述べた。

基調講演した参議院議員の加納時男氏は、「原子力は政治においても重要なテーマであり、国会や自民党内でも積極的に発言してきた」と強調。メディアの影響力を指摘したうえで、今回の国内外での地震報道について、「事実」と「報道されなかった事実」について語り、放射能の放出とは言えないレベルの漏洩、避難の必要は全くなかったこと――が報道されなかった、と指摘。今後の課題解決として、@地震と原子力トラブルの同時発生時の対応Aメディアへの情報提供のあり方B客観的な原子力教育の充実――などを挙げた。

海外からはL.マンパイ世界原子力発電事業者協会(WANO)常務理事が基調講演し、TMIやチェルノブイリ事故を経験した教訓から、「規制だけでは不十分であり、最高水準の安全を求めて共に努力することが重要だ」と述べた。

特別講演として、東京電力の武黒一郎・副社長が「さらに安全な原子力発電所を目指して――新潟県中越沖地震を踏まえた耐震安全性と防災の強化」と題して講演した。

同氏は今回の地震では基本的に、「設計通りのプラント挙動と運転員の冷静・的確な操作によって安全を確保した」としたうえで、所内変圧器の火災、微量の放射性物質の漏洩について陳謝した。

その上で、健全性評価では「1〜7号機すべての原子炉建屋が弾性範囲内にあることを確認」、代表的な主要機器の応力解析でも「地震荷重の計算値は設計で定める許容応力を下回っている」と紹介した。今後の取り組みとしては、@地震のメカニズムを解明し、新たな設計用基準地震動Ssを策定するAそのSsを使って設備の耐震安全性評価を行い、必要に応じて機器や配管等の補強工事を実施する――とした。

今回の国際シンポジウムで各発表者が使用したパワーポイントのオリジナル資料は、3共催機関の各ホームページで公開される。


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