[原子力産業新聞] 2008年2月28日 第2418号 <4面>

SPring‐8で地球深部を探る マントルに「プレート墓場」?

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターはこのほど、高輝度光科学研究センターと共同で、SPring‐8を利用して、地球内部を構成する「マントル遷移層」の化学組成を解明、これにより、同遷移層下部に、沈み込んだプレートが横たわる「墓場」が存在する可能性が示された。

地球内部の「上部マントル」と「下部マントル」に挟まれた深さ410〜660kmの「マントル遷移層」と呼ばれる領域はこれまで、その化学組成が明らかでなかった。今回、愛媛大と高輝度センターのグループは、SPring‐8の高温高圧ビームラインBL04B1の強X線で、超音波の伝わる速度を「マントル遷移層」の環境に相当する約20万気圧、1,400度Cのもとで決定することに世界で初めて成功した。この解析結果を地震学的に得られているデータと対比したところ、「マントル遷移層」の組成も「上部マントル」と同じかんらん石であることが判明した。

地震波の速度はマントル中、深くなるとともになめらかに上昇していくが、「マントル遷移層」の上・下部ではそれぞれ、その速度が急激に上昇する「地震学的不連続面」となっている。今回のデータをさらに検討したところ、「マントル遷移層」下部の地震波速度の変化は、「ハルツバージャイト」と呼ばれるプレートの主要物質のみであることも示された。これは、沈み落ちたプレートが、地下約660km付近にたまっている、いわば「プレートの墓場」の存在可能性を示唆している。


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