[原子力産業新聞] 2008年3月6日 第2419号 <3面>

特集X フランス 「地層処分が結論」  G.ウズニアン部長に聞く(3)

(前号につづき)

ビュール選定の理由

――ビュールを選定した際、最初から250平方kmもの広い粘土層があることが予め分かっていて、戦略的に選択したのか。それなら、法律に“地下研を最終処分場にしない”と盛り込んでも、広範な粘土層から現在の地下研を外して候補地点も選択できるので、納得がゆくが。

ウズニアン部長 ビュールのカルボ・フォーディアンという地層は、パリ北部やロンドンにもあり、この地層についてはある程度の知見はあった。ただし、ビュールを選んだ際、この地層が250平方kmあるとは分からなかった。あくまで調査の結果、分かったことだ。従って、「当初から、処分場候補地も選定し易いとの目論見があったか」との問いには答え難いが、その地層がかなりの広がりを持つことは、当初から分かっていた。

――ビュールを選定した理由を他に挙げるとすると。

ウズニアン部長 もう1つの理由は、地元からの強い誘致だ。ビュールはムーズ県とオート=マルヌ県の県境にある。そしてオート=マルヌ、ムーズの2つに属する地域全体も手を挙げた。つまり、その2つの県、および地域が手を挙げたため、県境のビュールが選ばれた。今後は、30平方kmくらいに地域を絞り、このエリアで候補サイトを募りたい。既にいくつかの候補地域で、色々なレベルでの検討が始まっている。

――地方議員の役割も大きかったようだが。

ウズニアン部長 フランスの地方議員は、地域振興のため、イニシアチブを取りたいという思いが強いようだ。今はまず、ANDRAがシナリオを作り、それを地方議員に提供する。そしてそれを地方議員が自分達のものとして、プロモートするようなスキームになりつつある。

   ◇    ◇   


規制当局の役割

――フランスの場合、規制当局が今までの過程のなかで何らかの役割を果たしたのか。

ウズニアン部長 規制当局は、ANDRAが発表した計画に対して、“安全上、問題ない”との保証を与えるような活動を行ってきている。フランスの規制当局はスウェーデンと違い、国民に直接メッセージを与えるのではなく、あくまで政府側の安全のエキスパートとして働く。そして政府が国民に対し、安全を保証する形になる。責任を取るのは国だ。

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意見聴取

――OPECSTが1991年のバタイユ法を作る際、様々な分野の人々から意見を聴取したと聞いたが、どういう人々から意見を聴取したのか。

ウズニアン部長 1991年の時も2006年の時も、多くの組織から意見を聴取した。例えば、原子力庁(CEA)、ANDRA、電力公社(EDF)、アレバ社、労働組合、グリンピースなど反対派、科学者、商工会議所、県庁、地方議員等、農業団体、つり同好会、狩猟同好会など。2006年の場合、その模様はテレビ放映された。

――テレビ放映は透明性を確保するためか。

ウズニアン部長 そうだ。どれだけの人が見るかは不明だが、形としては実施した。

   ◇    ◇   


長期貯蔵の役割

――100年間、再取り出し性を保つということは、地下貯蔵の概念だと思うが。

ウズニアン部長 違いは、長期貯蔵の場合、どこかに持って行かなければならないが、地層処分の場合、100年過ぎればそのまま閉めたい時に閉められる点だ。

――2006年の段階で、1つの方法に絞り込むかと思っていたが、そうではなかった。非常に慎重な進め方だ。

ウズニアン部長 2006年の法律によって、地層処分という方法は決定された。群分離・核種変換は、廃棄物低減のための、将来の第4世代炉開発のための道筋を付けるものとして残った。また「長期貯蔵」という言葉は無くなり、単なる「貯蔵」という言葉だけが残った。貯蔵は、処分を待つ間の必要なフェーズとしての位置付けであって、代替案ではない。地層処分と並行してあるものではない。

――スウェーデンのオスカーシャム市長は、「一番重要なことは、時間をかけること」と言っていたが。

ウズニアン部長 その通りだ。(1991〜2006年の)15年間に色々なことをした。ある意味、今にしてみれば無駄に思えるような議論もあったが、議論を重ねた結果、現在は極めてシンプルな結論に至っている。良い15年であったと思う。

(つづく)


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