[原子力産業新聞] 2008年3月13日 第2420号 <3面>

特集Y 複数のオプションを 仏原子力庁 ケシュメール次長に聞く(1)

フランスが1991年に制定したバタイユ法は、地層処分に限定することなく社会の要請が高いオプションについても、並列して研究開発を進め、15年後にフランスとして取るべき道を決めるというものだった。つまりバタイユ法は、様々なオプションの中から解決策を社会が学習するプロセスと考えることができる。

仏原子力庁(CEA)のディディエール・ケシュメール国際部次長(=写真)に話を聞いた。

   ◇     ◇   

――フランスで廃棄物処分問題が進展した重要なポイントは、1つの概念に限定することなく複数のオプションを提示したことか。

ケシュメール次長 そうだ。2006年の法律でも、地層処分を優先的解決策とはしているものの、群分離・核種変換、長期貯蔵も残されている。地方の議員や住民から技術的解決策が示されることは期待できないが、オプションが1つに限定されることは絶対に歓迎されない。その中から出てきた発想が、まさに“閉めない”、つまり“再取り出し性”という概念だ。また、社会の理解を得るためには、(1)議会を含めた国が十分議論を経たうえで、時間をかけてしかるべき決定を下すこと(2)地方の議員や住民に対しても、法律は定めるが方向性はあくまでオープンであるという印象を与えること――が重要だ。

――一番重要なことは、“クローズしないで、柔軟性を持つ”ということか。

ケシュメール次長 バランスという意味では、“これだけの解決しかない”というのはあまり良くない。しかし、“オープンです、常に色々なオプションがありますよ”と言うだけでは、いつまで経っても決定が出ないという印象を与えてしまう。フランスの場合は、15年かけて議論をし、研究開発も行ってきた。その結果、2006年の法律に至り、しかもまだオープンであるという印象を与える実態を伴った決定である。また2006年の法律における重要な点は、3つの分野それぞれに具体的なスケジュール(群分離・核種変換=2020年にも第4世代炉のメドを付ける、貯蔵=2012年にも現在の貯蔵庫を拡張するか、新設するかの方針を示す、地層処分=2015年に処分場建設の許認可申請、2025年に処分場操業)を明示したことだ。すなわち、オープンであっても目標を具体的にすることが重要だ。もう1つ重要なことは、議論の余地があることを示すことだ。目標のスケジュールは決めたが、まだかなり先の話である。このことは、国民に対し、性急に物事を進めるという印象を与えず、原子力施設の立地には時間がかかるという従来の概念と一致する。余裕のある目標を定めたことは、十分な時間があるということであり、議論の余地がある、しかも研究開発も継続する、ということで人々にある種の安心感を与えている。「決定されているが、クローズしたものではなく、まだ議論の余地がある」ということを示すことができたということは、重要なポイントだ。

――サイト選定のポイントは。

ケシュメール次長 サイト選定において、“核のごみ捨て場”という印象が住民に残る限り、絶対にうまくいかない。また、“住民の良心を金で買う”という構図、イメージがあっても絶対ダメだ。“金を払うから受けてくれ”、ということではなく、ビュールでは雇用創出やバイオマス研究等、新たな活動が始まりつつある。その地域では、従来考えられなかったような科学的な新しいものが導入され、地域のため、整備された持続可能な経済発展に寄与できるというメッセージを発信することが必要。     (つづく)


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