[原子力産業新聞] 2008年3月27日 第2422号 <3面>

米フロリダ州委が全面承認 FPL社のターキーポイント増設プロジェクトで

米国フロリダ州公益事業委員会は18日、フロリダ・パワー&ライト社(FPL)から申請されていた原子力発電所増設プロジェクトを、賛成多数で承認した。これによりFPLは、早ければ来年にも、増設へ向けたプロジェクト・コストを電力料金に課金することが出来る。

FPLは今後、州環境保護局から認可を取得するとともに、年内にも連邦レベルの原子力規制委員会(NRC)へ建設・運転一体認可(COL)を申請する考えだ。

同プロジェクトはFPLが所有するターキーポイント・サイト(=写真)に、6号機と7号機の2基を増設するもので、それぞれ2018年、2020年の運開を目指している。採用炉型は未定だが、合計出力220万〜300万kW規模を計画している。プロジェクトの総コストは、採用炉型にもよるが、「12〜24億ドルの範囲」(FPL広報部)だという。

また今回公益事業委員会は、プロジェクトの承認にとどまらず、FPLが主要資機材調達に要する“手付金”を支払うことも承認。これによりFPLは、実際の建設に必要な大型鍛造品や、工程上重要な原子炉やタービンの部品など、調達のリードタイムが長い資機材を確保することが可能となり、増設プロジェクトの実現性が大きく高まることになる。

大型鍛造品の製造が可能なのは、世界でも日本製鋼所1社に限られていることなどから、原子力発電所の建設ラッシュが起こった場合に大型鍛造品の納期が大幅に遅れることが懸念されている。そのため米国内でも、ドミニオン社、エンタジー社、エクセロン社など新規建設プロジェクトを抱える原子力発電事業者が、それぞれ供給者と事前に資機材調達契約を締結し、自衛策を講じている。公益事業委員会の決定はこうした傾向を反映したもので、原子力発電所建設の実現へ向けた州政府の肩入れぶりを象徴している。

地元紙の報道によると、フロリダ州の政治家の多くが「原子力発電が燃料の海外依存を低減し、地球温暖化防止に貢献する」との認識で一致しており、公益事業委員会はFPLの申請を最優先で審議したという。

なお公益事業委員会は昨年12月にも、FPLが所有する原子力発電所の出力増強を認可。手続きが順調に進めばターキーポイント3、4号機とセントルーシー1、2号機で、2012年末までに合計で41万4,000kW規模の出力増強が達成される予定だ。

電力需要の急増が予測されるフロリダ州で、FPLは2011〜2020年にかけて総発電設備容量を33%増強させることを計画している。FPLの電力供給は現在、天然ガス=50%、原子力=20%、石油=8%、石炭=5%で、残る17%は他電力からの融通でまかなっている。ターキーポイント6、7号機が運開すると、原子力シェアが30%に拡大して天然ガスへの過度な依存が緩和され、不安定な燃料価格に左右されない電源のベストミックスを達成することが出来ると見込まれている。

またFPLは、6、7号機の運開により年間700万トンのCOが削減されると試算しており、フロリダ州が掲げるCO排出量削減方針にも合致する。州の環境保護局によると、700万トンのCOは自動車120万台分に相当するという。


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