[原子力産業新聞] 2008年4月3日 第2423号 <3面>

EPRが英国での事前審査対象炉型に 規制分野で英仏協力

英仏首脳は3月27日、英国で機運が高まる新規原子力発電所の建設に向け、原子力安全や事前認可等の分野で緊密に協力することで合意した。英国ではこれまでに4炉型の包括的設計審査(GDA)フェーズTを終了。今後、対象炉型数を3炉型へ絞る予定だが、仏アレバ社製EPRが審査対象に選ばれることは確実となった。

英国を訪問したN.サルコジ仏大統領とG.ブラウン英首相の共同声明によると、両国の規制当局は相互に人員を派遣し、共同で原子力安全、セキュリティ、廃棄物管理、原子炉許認可等を検討。原子力発電所新設に向けた法規制整備を、効率よく迅速に進める考えだ。

将来的には、英仏以外の欧州諸国が参加することも想定されており、欧州共通の原子力法規制整備に拡大する可能性もある。

また英仏両国は、国際原子力機関(IAEA)主導の「核燃料供給保証構想」の実現に向け協力することも確認している。

仏電力公社(EDF)の英法人EDFエナジー社は昨年10月、「新設に向けた法規制が整備されれば、政府からの資金援助なしに、EDFエナジー社単体、あるいは他の出資者と共同で、新規原子力発電所を運開させることが十分可能」とするパブリック・コメントを英政府に提出。@新規建設計画に関する申請手続きの合理化A新設サイト特定のための戦略的サイト評価に関する保証B採用炉型の事前設計認可の実施C新たに生じる放射性廃棄物などバックエンド問題への対応――等の施策を英政府が実施すれば、2017年までに初号機を、2025年までに計4基のEPRを英国で運開させるとの自信を示していた。英仏首脳の今回の合意は、ほぼEDFエナジー社の要求に沿った形となっている。

英国では4月末をメドにGDA審査対象を、@カナダ原子力公社(AECL)製ACR1000(120万kW)A仏アレバ社製EPR(160万kW)B米GE日立ニュークリア・エナジー社(GEH)製ESBWR(155万kW)C米ウェスチングハウス社製AP1000(110万kW)──の4炉型から3炉型に絞る予定だが、今回の英仏合意によりEPRが審査対象の3炉型に選ばれることは、ほぼ確実となった。

エネ大臣は原子力の大幅拡大を主張

一方、英ビジネス・企業・規制改革省(BERR)のJ.ハットン・エネルギー担当大臣は3月26日、原子力発電所新設は大規模に実施すべきであり、その経済効果は英産業界にとって北海油田開発以来最大規模になるとの考えを示した。

英国最大の労組ユナイトが主催する国際会議に出席した同大臣は、「地球温暖化対策に真剣に取り組み、英国のエネルギー・セキュリティを可能な限り確保するためには、原子力発電を大幅に拡大する必要がある」と言明。そして、欧州の原子力ルネサンスを牽引するためにも、英国の総発電電力量の約20%を供給する既存の原子力発電所をリプレースするだけではなく、英国内で大規模な新規建設を実施すべきとの自説を展開した。

ハットン大臣は、原子力発電の安全性は十二分に証明されていると指摘し、廃棄物処分問題についても、「処分方法はすでに決定しており、後は処分場を決めるだけになっている」と強調。原子力発電に対する技術面での懸念は払拭されているとの見方を示した。

また大臣は、原子力発電所の建設は既存炉のリプレース分だけでもヒースロー空港の新第5ターミナル建設の3倍もの工事規模であり、1万人分の雇用を生み、経済効果は200億ポンドに達するとの試算を示した。

CANDU炉は不利に

なおユナイトは同日、英国で採用される炉型について声明を発表し、世界標準となる炉型を選択するよう要望した。英国産業界が世界標準炉の建設および運転に精通することで、製品およびサービスの海外輸出が見込める、との考えだ。

EPRは、すでにフィンランドとフランスで、実機の建設を開始している。ESBWRとAP1000も、米国や中国で新設プロジェクトが存在している。

これに対し、カナダ原子力公社(AECL)製の最新型CANDU炉であるACR1000は、カナダ国内以外での新設プロジェクトがなく、不利な立場に立たされることになりそうだ。


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