[原子力産業新聞] 2008年4月10日 第2424号 <3面>

3月末までに計9件15基 米国でCOL申請相次ぐ

米国で3月31日、新たに2件の建設・運転一体認可(COL)が、原子力規制委員会(NRC)に申請された。部分申請の1件を含め、これまでにCOLが申請された新規原子力発電所建設プロジェクトは、これで9件15基になった。

ボーグル・サイト

サザン・ニュークリア・オペレーティング社(SNC、サザン・カンパニーの子会社)はアルビン・W.ボーグル原子力発電所サイト(ジョージア州)を対象としたCOLを、NRCへ申請。AP1000を2基建設することを想定している。

SNCのB.ビーズリー社長兼CEOは、「ジョージア州では2015年以降に電力需要が大幅に増加する」との見通しを示し、「原子力発電は、環境影響が低く、安全で、供給安定性が高く、コストの低い電源。今回のCOL申請により、将来の電力需要に対し原子力オプションを保持することが出来る」と語った。

SNCは2006年8月、ボーグル・サイトを対象とした事前サイト許可(ESP)もNRCに申請しており、現在審査中である。ESPを取得すれば、COL手続きが大幅に効率化され、早期にCOLを取得できると見込まれている。

サザン・カンパニーは、原子力発電所の新規建設をめざしてCOLの実証を目的としたコンソーシアムであるニュースタート・エナジー・デベロップメントのメンバー企業。昨年5月には、デューク・エナジーと共同で進めていたウィリアム・ステイツ・リー3原子力発電所プロジェクトから撤退。ボーグル・サイトでのプロジェクトに、資金と人材を集中する方針を明らかにしていた。

サマー・サイト

サウスカロライナ・エレクトリック&ガス社(SCE&G)とサンティ・クーパー社も3月31日、サウスカロライナ州のバージル・C.サマー原子力発電所サイト(=写真)を対象としたCOLを、NRCへ申請した。こちらも同じく、AP1000の2基増設することを想定している。

SCE&GのK.マーシュ社長は、「正式に建設を決定したわけではない」としながらも、「原子力発電は安全でCOを排出せず、サウスカロライナ州にとって正しい判断」と強調。サンティ・クーパー社のL.カーター社長兼CEOも、「サウスカロライナ州の電力需要が増大する中で、原子力発電は電力供給のカギとなる」とした上で、今回のCOL申請は、原子力発電を引き続きオプションとして堅持する姿勢を示すものと指摘した。

両社は早ければ2011年にもCOLを取得。サウスカロライナ州公益事業委員会等の承認を得れば、COLの取得直後に着工し、ベースロード電源の需要増が予測される2016年頃に初号機を運開させたい考えだ。

SCE&Gも、ニュースタート・エナジー・デベロップメントのメンバー企業だ。

資器材調達も

なおSCE&Gは翌4月1日、同プロジェクトの実施に必要な主要資器材の調達で、ウェスチングハウス社およびショー・グループと合意したことを発表した。AP1000の建設に必要な大型鍛造品や、工程上重要な原子炉やタービンの部品など、調達のリードタイムが長い資器材を確保するのが狙いだ。

マーシュ社長は、資器材調達はプロジェクト・スケジュールの順守に欠かせない要素と指摘し、「1日も早く正式なエンジニアリング・資器材調達・建設(EPC)契約を締結したい」との意向を明らかにしている。

ウェスチングハウス社のS.トリッチ社長兼CEOは今回の合意を、「米国の原子力ルネサンスに向けた大きな一歩」と形容。EPC契約の締結に向け、3者で詳細を詰めていくと語った。

世界的に原子力発電所の建設が拡大する中、大型鍛造品等の供給不足は十分に起こりうる事態だ。プロジェクト・スケジュールの遅延により泥沼に落ち込んだ過去のある米電力業界にとって、スケジュールの順守は最重要事項となっている。


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