[原子力産業新聞] 2008年4月17日 第2425号 <1面>

福田首相 原子力の重要性明言 第41回原産年次大会に出席し所信

日本原子力産業協会は15日と16日、東京・港区の東京プリンスホテルで第41回原産年次大会を開催した。「人類の持続的発展と原子力の果たすべき役割」を基調テーマに、世界各国から参加した代表と活発な意見・情報交換を行った。今回、福田康夫首相が開会セッションに急遽出席し、今年7月に自ら議長として開催するG8洞爺湖サミットで、地球環境問題やエネルギー安定供給対策として、「原子力の重要性に配慮しながら各国との議論にリーダーシップを発揮したい」と力強く表明した。日本を含む23か国・地域、3国際機関から約890人が参加した。

「温暖化対策の切り札」 首相が初めて踏み込んで発言

まず開会セッションでは、今井敬・日本原子力産業協会会長が所信表明を行い、「原子力の利用は地球温暖化対策のCO削減に最も有効であり、日本だけでなく世界に浸透させなければならない」と強調し、原子力関係者は「いま活躍すべき大事なときであり、その責任は重大である」と訴えた。

次いで福田首相が所信表明を行い、「原子力発電は地球温暖化対策の切り札」と述べ、原子力開発の重要性について初めてと言ってよいほど踏み込んだ発言を行った。

1月通常国会の施政方針演説では基本方針の中で、「地球環境や資源・エネルギー問題などにどのような処方箋で対応するのか」との問題提起を行い、温暖化ガス排出削減の重要性を訴えたものの、具体的には環境関連、省エネ、新エネなどの技術開発については言及したが、直接原子力についてはふれていなかった。

福田首相は、「いま世界的な原子力回帰の動きがある。この原子力ルネサンスと呼ばれる動きは、我が国が一貫して原子力開発利用してきたことが決して間違いではなかったことの証左だ」とも述べた。

セッション1「持続的発展への条件を問う」の議長を務めた茅陽一・東京大学名誉教授は、パチャウリIPCC議長が急遽大会に出席できなくなったことで、今大会の基調となる特別講演を行い、「原子力発電は脱炭素対策のエース」と明言した上で、今後は発展途上国での拡大をどのように行っていくかが大きな課題だと指摘した。

茅議長は、今後の発展途上国の経済発展を考慮すると、2050年に世界のCO排出半減提案がいかに困難な課題であるかを指摘し、現実的な提案として、先進国が現在の排出量の半減以上をめざし、途上国がエネルギー効率の改善や非化石エネルギーの利用拡大などによって、数値目標は定めずにできるだけの排出削減を行うという、ウイン・ウインの関係をめざすべきだと強調した。

これによって、平均気温が産業革命以前より3度C程度上昇するものの、生物多様性・異常気象にはかなりの影響がでるものの、農業生産・国内総生産・大洋の海水が大循環する熱塩循環の崩壊やその他の非可逆的現象には、それほど大きな影響はでないのではないか、と指摘した。

そのため日本では、発電、鉄鋼、輸送、民生、その他産業に各々基準年比の排出率をかけて試算してみると、2050年に排出半減は不可能なものではないことが分かる、とした。そのときの電力の原子力発電量比率は、05年の26%から40%に拡大するとしたもの。

同年次大会は16日まで、国際機関や各国からの代表などが参加し、活発な意見・情報交換を行った。(次週に大会の概要)


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