[原子力産業新聞] 2008年4月17日 第2425号 <3面>

米国 動き出した新設プロジェクト 30年ぶりに正式発注

ウェスチングハウス社およびショー・グループは8日、サザン・カンパニーが計画する新規建設プロジェクトに関し、エンジニアリング・資機材調達・建設(EPC)契約を締結した。EPC契約は事実上の最終契約で、同プロジェクトは米国で30年ぶりに正式発注された原子力発電所になる。米国では昨年、旧許認可手続きに基づくワッツ・バー2号機の建設再開プロジェクトが再発注されているが、新しい許認可手続きによる新規建設プロジェクトの発注は1978年以来初めて。

同プロジェクトは、ジョージア州のアルビン W.ボーグル原子力発電所(PWR、121万5,000kW×2基)に、3、4号機を増設するもので、採用炉型はウェスチングハウス社製AP1000(110万kW級)。建設・運転一体認可(COL)が先月31日に、原子力規制委員会(NRC)へ申請されたばかりだ。

ボーグル原子力発電所は、ジョージア・パワー社(サザン・カンパニーの子会社)が45.7%、オーグルソープ・パワー社が30%、MEAGパワー社(ジョージア州の電力当局)が22.7%、ダルトン市当局が1.6%を所有し、サザン・ニュークリア・オペレーティング社(SNC、サザン・カンパニーの子会社)が運転を行っている。COLはSNCが各社を代表して申請したが、今回のEPC契約はジョージア・パワー社が各社を代表して締結した。

またジョージア・パワー社は今年5月1日に、ジョージア州公益事業委員会へ同プロジェクトおよびEPC契約の承認を申請する予定だ。承認されれば、COLの取得とあわせ、2011年にも着工。3号機は2016年、4号機は2017年にも営業運転を開始する。

EPC契約とは、設備の設計/機器の調達/建設・試運転に至るまで一括して請負う建設工事請負契約で、今回のEPC契約の詳細は明かされていないが、ターン・キー方式(完成品引渡し方式)であるのが一般的だ。

原子力発電所建設のような大規模なプロジェクトを実施するためには、事業者へ融資する金融機関はプロジェクトの全期間を通じ、最新の金融技術、保険技術を駆使してリスク管理を行う必要がある。そのため着工から運開までの期間は、EPC契約の締結によって全責任を請負者(この場合ウェスチングハウス社とショー・グループ)の負担とし、コスト超過、スケジュール遅滞等のリスクも可能な限り請負者に転嫁することが出来る。

EPC契約が締結されたということは、事業者が融資およびCOL取得についてある程度の見通しを得たことを意味しており、GE日立ニュークリア・エナジー社(GEH)がドミニオン社、エンタジー社、エクセロン社などの事業者と締結している資器材調達契約よりも、一歩進んだ段階と言える。

ショー・グループはウェスチングハウス社株の20%を所有しており、両社はAP1000の建設プロジェクトでコンソーシアムを組んでいる。4月1日にはサウスカロライナ・エレクトリック&ガス社と、7日にもプログレス・エナジー社と、AP1000の建設プロジェクトの資器材調達で基本合意したばかり。いずれのプロジェクトも、今後さらに詳細を詰め、EPC契約へこぎつけたい意向だ。

一方ESBWR陣営のGEHも「各事業者と仕様および価格の詳細を詰め、資金面やCOLの見通しが立った時点で、EPC契約を締結する」としている。今後米国では、今回と同様のEPC契約が続々と締結されることになりそうだ。

米国で最後に発注された原子力発電所は、コモンウェルス・エジソン社(現エクセロン子会社)が1978年12月に発注した、イリノイ州のキャロルカウンティ原子力発電所(PWR、117万5,000kW×2基)。受注したのはウェスチングハウス社だったが、着工することなく発注がキャンセルされている。


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