[原子力産業新聞] 2008年4月24日 第2426号 <2面>

「地球規模の視点重要」 今井原産会長 温暖化対策は原子力

昨年7月、世界最大の柏崎刈羽原子力発電所が、未曾有の地震に見舞われた。柏崎市、刈羽村の皆様をはじめ、被災された皆様には、心からお見舞い申し上げたい。

中越沖地震は、想定外の極めて巨大な地震であったが、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」という、原子力安全にとって最も重要な機能は満足に働いた。このことは、日本の原子力発電の安全技術が、最大級の地震にも、十分耐えうるということを、立証したと考えている。

各電力会社は、国の評価を得て、必要な対策を講じ、地震に強い原子力発電所として、地元の方々の安心が得られるものにしてほしいし、より災害に強い発電所造りのために広く世界に発信して共有してほしい。

さて、地球温暖化対策が、世界各国にとって最も重要な課題の1つになっている。

日本は、基準年となる1990年の、温暖化ガス排出量の6%削減に向けて走り出したが、その道は極めて厳しい状況にある。温暖化ガス排出量は、05年度実績で基準年に対し、7.7%増加している。

日本の場合には、まず原子力発電の設備利用率向上に、本格的に取組む必要がある。日本の設備利用率は、世界の中で極めて低い状況だ。06年度の設備利用率は70%であり、07年度は、中越沖地震の影響で、61%とさらに低下した。これが米国並みの90%になると、06年と比べても発電電力量が約1.3倍となり、約900億kWh相当の電力量の増加が見込める。

この電力量を現在の火力発電に置き換えると、日本全体のCO排出量の約5%の削減効果になる。

その発電費用を今のバレル当たり90ドルを超えた石油価格で換算すると、年間1兆円規模で節約できる。

原子力発電はわが国で30年以上にわたり実用大規模発電としての実績があり、原子力発電を抜きにして、わが国の地球温暖化対策を考えることはできない。燃料サイクルについても、プルサーマル計画が着実に推進しており、再処理工場の操業開始も目前で、その完結に向け明るい兆しだ。

高レベル放射性廃棄物処分については、NUMOと電力会社はさらに緊密な連携を図り、国のサポートのもと、候補地を早く確保できるように頑張って頂きたい。

21世紀は、地球規模での持続可能な発展を図る世紀である。国内の問題だけでなく、グローバルな視点で物事を考えることが重要だ。地球温暖化対策に最も有効な原子力の利用を世界に広め、それを活用して地球環境保全に取組む必要がある。原子力関係者の責任は重大であることを肝に銘じてほしい。


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