[原子力産業新聞] 2008年4月24日 第2426号 <2面>

脱炭素対策のエース 茅東大名誉教授 途上国導入が課題

エネルギー資源の制約では、石油資源にいつピークがくるのかは議論が分かれるが、くることは間違いがない。

地球温暖化防止を考えるとき、大気のCO濃度をどこまでで一定に抑えられるかが問題だが、CO濃度が一定になっても排出量は下げ続けなければならないし、長期的にはいまの一桁以上、下にしなければならないだろう。

今後の発展途上国の経済発展を考慮すると、2050年に世界のCO排出半減提案がいかに困難な課題であるか。現実的な提案として、先進国が現在の排出量の半減以上をめざし、途上国がエネルギー効率の改善や非化石エネルギーの利用拡大などによって、数値目標は定めずにできるだけの排出削減を行うという、ウイン・ウインの関係をめざすべきだ。

これによって、平均気温が産業革命以前よりは3度C程度上昇するものの、生物多様性・異常気象にはかなりの影響がでても、農業生産・国内総生産・大洋の海水が大循環する熱塩循環の崩壊やその他の非可逆的現象には、それほど大きな影響はでないのではないかと考えられる。

そのため日本では、発電、鉄鋼、輸送、民生、その他産業に各々基準年比の排出率をかけて試算してみると、2050年に排出半減は不可能なものではないことが分かる。そのときの電力の原子力発電量比率は、05年の26%から40%に拡大するとしたものだ。

原子力発電は「脱炭素対策のエース」であり、今後は日本の協力も含め、発展途上国での拡大をどのように行っていくかが大きな課題だ。


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