[原子力産業新聞] 2008年4月24日 第2426号 <2面>

持続可能な発展のために Y.ソコロフ IAEA事務局次長

現在、世界では、16億人もの人々が電気のない生活環境にあり、その80%が、南アジアとアフリカのサハラ砂漠以南に集中している。国連の定義によると、持続可能性の概念には、「経済」、「環境」、「社会」、「制度」の4つの要素がある。世界の持続可能な発展のためには、何よりもエネルギー、とりわけ電力を必要とする。電力の開発には、石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギー、そしてこれらエネルギー効率のベストミックスといった選択が伴う。途上国におけるエネルギー消費量増加の結果、もたらされた化石燃料の獲得競争は、エネルギー安全保障の懸念を高め、これとCO排出増による気候変動の影響とがあいまって、原子力発電への評価を高めてきている。「原子力なくして信頼あるシナリオなし」といえそうだ。

世界の原子力発電累積運転経験は今や、1万2600炉・年にも達しているのみならず、高負荷率、低コスト、良好な安全実績の記録にもなっている。また、現在、原子力発電所を運転中の30か国に加え、さらに約30か国が原子力発電導入計画を検討中だ。IAEAでは、これから原子力発電を計画する途上国への支援プログラムを用意している。

各国の原子力オプションの持続可能性を分析する際、前述の4要素にも原子力固有の問題が含まれてくる。つまり、「経済」では投資・操業費用、産業界の支援、イノベーション、国際協力、「環境」では廃棄物管理、ウラン資源、燃料サイクル、地域間協力、「社会」では国家政策、PA、教育・訓練、人材開発、多国間アプローチ、「制度」では法律、規制、許認可手続き、安全、セキュリティ、核不拡散、資金調達、運営組織、インフラストラクチャなどと、数多くの特性を考慮せねばならない。

また将来的には、役目を終えた原子炉の廃止措置も課題となろう。


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