[原子力産業新聞] 2008年5月1日 第2427号 <4面>

プラズマ密度、100倍を達成 核融合研 低温で核融合が可能に

核融合科学研究所はこのほど07年度大型ヘリカル装置(LHD=写真)実験成果報告会を開き、1,100兆個/ccの超高密度プラズマの閉じ込めに成功したことなどを発表した。このプラズマにより、従来の核融合条件よりも低い温度で運転可能なヘリカル型核融合炉の実現に向け、新しい展望が拓けたとしている。

LHDは高密度プラズマを生成・維持できることを特徴とするが、1,100兆個/ccは、プラズマ密度だけを比べると従来比で約100倍を達成する成果。核融合を起こすための条件はプラズマ密度で100兆個/cc、温度で一億℃、閉じ込め時間で1秒が必要とされるが、密度ではこの条件の10倍を達成したことになる。

1,100兆個/ccを達成した時のプラズマ温度は約400万度で、同研究所は今後、この温度を引き上げる研究を推進する計画。1,000兆個/ccクラスの超高密度プラズマでは7,000万℃程度のプラズマ温度で核融合を起こす可能性が高いという。

水素の氷(ペレット)を高速でプラズマ中心部に連続的に打ち込み、同時にプラズマ周辺部の水素を効率よく排気し、プラズマ密度を飛躍的に高めることに成功した。

一方、同研究所は06年度の運転でプラズマ密度12兆個/cc・イオン温度6,000万℃を達成していたが、07年度は同じく20兆個/cc・7,900万℃も達成した。今回、こうした高いイオン温度のプラズマでは、プラズマを冷却してしまう不純物がプラズマの中心部に蓄積されなくなる、という興味深い現象の観測にも成功した。


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.