[原子力産業新聞] 2008年5月15日 第2428号 <3面>

米露が原子力協力協定締結

米国とロシアの両国政府は6日、原子力エネルギーの平和利用に関する協力協定に調印した。両国の原子力分野における民間協力に必要な法的基盤を整備するためのもので、ロシアの関連法規と米国の原子力法第123条の制限項目に配慮した内容。原子力平和利用の枠組みとなる主原則を盛り込んだアンブレラ協定の役割を担うことになり、同協定が発効すれば両国の企業間のジョイントベンチャーが可能になるほか、核燃料物質や原子炉、大型原子力機器の輸出入にも道が拓かれることになる。

この日、モスクワで協定文書に調印したのは、ロシアの国営原子力総合企業であるロスアトムのS.キリエンコ総裁と米国のW.バーンズ駐ロシア大使。協定締結のための協議は2006年7月のG8サミットでV.プーチン露大統領とG.ブッシュ米大統領が発表した共同声明に基づいて開始され、昨年7月には協定の締結案を盛り込んだ原子力関係の共同声明を両大統領が発表していた。その後、先月6日に両国間の協力分野の概要が「戦略的枠組み宣言」として示され、原子力平和利用協力協定の締結は「大量破壊兵器の拡散防止」の中の一項目として、核不拡散体制の強化、ロシアの国際ウラン濃縮センター構想、米国の国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想、IAEA主導の革新的原子炉・核燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO)などと共に明示されていた。

同協定案は今後、両国議会の承認を得るために提出されることになるが、キリエンコ総裁は「この協定によって核不拡散体制強化や世界の大規模な原子力開発のための諸条件作り、平和利用分野の原子力ビジネスを促進する機会の創出が促進される」と強調。「これからは原子燃料や原子力設備が両国間の国境を越えるだけでなく、協力範囲は第三国にまで及ぶことになるだろう」と指摘した。

米国のバーンズ大使も、冷戦時代にライバル関係にあった両国が、責任を共有するパートナーになったと指摘。原子力の平和利用こそ両国の最も重要な協力分野の1つだとの認識を示した。


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