[原子力産業新聞] 2008年5月22日 第2429号 <2面>

運転管理の時代適応へ 「技術と法」分科会 原子力法制度で報告書

日本の原子力安全規制のあり方を根本的に検討している「原子力法制研究会」(委員長=班目春樹・東京大学大学院教授)はこのほど、「技術と法の構造分科会」(分科会長=同)の平成19年度の検討内容を取りまとめた報告書を作成した。各章ごとに委員が分担して執筆し、文責は執筆者にあるとしている。

同研究会は、我が国の原子力開発が時を経て、現状や技術の実態を踏まえて、法制度の面でもさまざまな問題が生じているとの認識から、原子力法制度のあるべき姿を提供することを目標として学識経験者、電力会社、メーカー、原子力安全・保安院、文部科学省などの委員で発足し、昨年3月から検討を行ってきた。

報告書では、現在の法制度の問題点としては、(1)新規事業や新たな規制ニーズの追加により、法体系がつぎはぎになっている(2)訴訟の主張や法解釈にとらわれ、柔軟な対応ができない(3)技術が定着化・定型化しているにも係らず、法令や体制がその状況を反映していない(4)導入技術に適する設計中心の法体系や体制となっており、運転管理の時代を反映していない――ことを挙げている。

電気事業法と原子炉等規制法の性格を分析し、両法の二重規制の有無等について論じ、2003年からの電事法改正で保安検査と同様の安全管理審査が導入されたことにより、両法の規制手法が類似のものになった結果、「同一施設に対してほぼ類似の手法で規制が行われる実質的な重複規制の問題が生じている」と指摘している。

このほか労働安全衛生法など他の法律との関連、外国の法例の紹介、さらに許認可基準、基本設計・詳細設計・使用前検査などの段階的安全規制の問題、性能規定化を前提とした法構造、確率論的安全評価の取り入れなどの課題についても言及している。


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