[原子力産業新聞] 2008年5月22日 第2429号 <4面>

手続き強化の連鎖を危惧 鈴木安全委員長が総合シンポで指摘

日本学術会議の総合工学委員会は14日と15日、東京・港区の同会議講堂で「グローバル時代をリードする原子力の新潮流」を主調テーマに、原子力総合シンポジウム2008を開催した。

基調講演をはじめ環境問題、教育問題、原子力産業の国際展開などのセッションで構成。14日は加納時男・参議院議員が基調講演、鈴木篤之・原子力安全委員長が特別講演を行った。

加納議員は、原子力ルネッサンスとして欧米やアジアでの建設計画を示すとともに、中東石油への依存度が45%と高い日本のエネルギーセキュリティの脆弱性を指摘。柏崎刈羽原子力発電所については、「安全をしっかり確認し、一刻も早い運転再開を望む」というのが自民党の見解とし、結びに、先月の原産協会の年次大会における福田康夫首相の「発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電所は地球温暖化対策の切り札」との挨拶を引用した。

鈴木委員長は個人的見解とした上で、当面の課題として耐震安全性の確認、検査制度の有効性の向上などを挙げるとともに、実体的安全性にも、説明責任や透明性など手続き的安全性にも絶対的安全は存在せず、その要求水準は、社会的に決められると指摘。事故・故障により実体が低下すると、手続きが強化されるが、この強化の連鎖を絶つのは専門知とした。

15日には田中俊一・原子力委員長代理が特別講演し、同委員会が最近取りまとめた「地球温暖化対策としての原子力エネルギー利用拡大のための取り組み」と「原子力の革新的技術開発ロードマップ」を説明、原子力に対する大きな付託に、産官民が一体となって応えたいと述べた。

原子力産業の国際展開では、三菱重工業、日立GEニュークリア・エナジー、東芝の3社がそれぞれのグローバル戦略や新プラント開発の状況などを説明した。


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