[原子力産業新聞] 2008年5月29日 第2430号 <4面>

中性子産業利用の協議会 57社で発足 会長に今井新日鉄名誉会長

中性子施設の産業界利活用を支援する「中性子産業利用推進協議会」が15日、企業・研究機関57社の参画で発足し、同日、東京・お台場の日本科学未来館で設立総会を開いた。J―PARC、研究炉「JRR―3」を研究開発ツールとした産業イノベーション創出を目指す。

発起人は、中村道治・日立製作所フェロー、橋本昌・茨城県知事、永宮正治・J―PARCセンター長の3者。

総会で挨拶に立った橋本知事(=写真)は、「J―PARCは日本の科学技術の有力なツール」と述べ、基礎研究から産業応用に至る広範な利用を通じ、飛躍的な研究成果が挙がることを、施設立地県として強く期待した。

初代会長には、原産協会会長でもある今井敬・新日本製鉄名誉会長が選任され、「産業界にとって本当に使いやすい施設とするべくユーザーの声をしっかり受け止めさらなる改善を」などと、各社の一層の努力を促す就任挨拶を庄山悦彦・日立製作所会長が代読した。

協議会は今後、既存の個人研究者ベースの懇談会とも協力、産学官連携による特定テーマに関する研究会立ち上げ、技術情報の提供、講習会等の企画などを通じて、産業界による中性子活用の基盤を固めていく。

今回、鉄鋼、自動車、電機、化学、製薬、食品、分析などを中心とする各企業と、独立行政法人として産業総合研究所と理化学研究所を加えた計57社でスタートしたが、設立準備段階で約190社に参画を呼びかけており、今後も、参画企業が増加する見通しだ。

総会後にシンポ

引き続き、J―PARCの産業利用に関するシンポジウムを開催。

冒頭挨拶で、岡ア俊雄・日本原子力研究開発機構理事長は、J―PARCを「科学技術創造立国にふさわしい新たなイノベーションを生み出す世界最先端の研究拠点に」と表明。永宮センター長は、近く50GeVシンクロトロンへのビーム入射、本年12月には中性子ビームの供用開始などと見通しを示した。

各産業界からの期待として、川上善之・エーザイ創薬研究本部課長は物理系だけでなく、化学、生物、薬学、農学などの各分野に研究の裾野を拡げ、アカデミアや企業が共同で利用できる環境を整えることを要望するとともに、「単なるハコの提供では駄目」として、成功例を示し、魅力を感じるような研究が展開されていくことを要請。藤木完治・文部科学省審議官は、SPring―8、その他大型研究施設との相補的効果に加え、トライアルユース制度などの利用しやすいシステムを省内の懇談会で検討しているなどと応えた。

また、林眞琴・茨城県企画部技監は、県として、2本のビームラインと、材料構造解析装置、生命物質構造解析装置を整備し、主に地元の中小企業の利用を見込んでいることに触れた上で、これらを用いた研究課題の提案を産業界に求めた。


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