[原子力産業新聞] 2008年6月5日 第2431号 <3面>

豪州ウラン協会が報告書ウラン輸出拡大で 「140億豪ドルの利益」

オーストラリアのM.ファーガソン資源エネルギー相が5月16日に公表した報告書で、同国のウラン輸出拡大により豪州は2030年に約140億豪州ドルの利益を得ることが可能であるほか、世界全体では数十億トンの温室効果ガスを抑制できるとの経済分析結果が明らかになった。

「豪州ウラン産業の見通し−−2030年までの経済効果を評価する」と題されたこの報告書は、同相の主導により豪州ウラン協会(AUA)が昨年開始した研究内容をとりまとめたもの。実際の作業はデロイト経済分析チームの専門家が既存の経済分析モデルとAUAのデータを活用して行った。

この研究ではまず、2050年までに大気中のCO濃度を550ppmで安定化させるという気候変動に対する穏健な行動シナリオと、CO排出量を多くの科学者が推奨しているように60%削減して450ppmにするという意欲的な行動シナリオを設定。これらに豪州国内のウラン政策について2種類のシナリオ(@採掘を既存の3鉱山に限定A新たな鉱山からも採掘を開始)を組み合わせてウラン輸出の経済効果を探っている。

穏健な行動シナリオでは2030年までの世界の原子力設備容量が現在の372GWから960GWに拡大すると設定しているが、これは1トン当たりの炭素価格を50米ドルとした「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第4次評価報告書の想定に沿ったもの。

意欲的な行動シナリオの方は2030年までの原子力設備導入レベルを1634GWとしており、2050年までのCO濃度を450ppmで安定化すれば、世界平均の気温上昇は約2℃に抑えることができるとしている。ただし、1トン当たりの炭素価格は少なくとも100米ドル必要となる。

穏健シナリオの方が実現する可能性は高いが、CO濃度は現在の385ppmよりはるかに高い。どちらのシナリオにおいても、豪州はそれぞれ世界のウラン需要の20%と30%を供給すると予想され、現在各州政府がしいている制約が解かれた場合の輸出量は2030年までに3万1400トンと6万4500トンに達する見込みだ。

AUAは、これらの輸出により豪州にもたらされる経済的な効果と温室効果ガスの排出抑制によって世界が浴する恩恵は数字で表すことができると指摘。「さらに保守的なシナリオにおいてさえ、豪州のウラン産業が潜在的な可能性一杯に拡大すれば、豪州のGDPは2030年までに現在の金額で142億ドル〜174億豪州ドルに増えることが明らかになった」と強調している。

AUAはまた、「これらのシナリオの下では、豪州のウラン輸出拡大によって、世界規模で抑制される温室効果ガスの排出量は2030年までに約110億トン〜150億トンと見積もられる」と予測。仮に、気候変動に対して一層本格的なアクションが取られた場合、豪州のウラン産業は豪州の経済拡大に一層大きな役割を果たすことになるとの認識を示した。


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