[原子力産業新聞] 2008年6月12日 第2432号 <3面>

発電炉用ウラン資源 「100年間は十分」NEAとIAEA 「レッド・ブック」刊行

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)は5月26日、「ウラニウム2007、資源、生産および需要(通称=レッド・ブック)」を公表し、「世界の原子力発電所における現在のウラン燃料消費率で見ると、少なくともあと100年間は十分なウラン資源が確保される」との見解を明らかにした。

レッド・ブックはNEAとIAEAが共同で2年に一度、取りまとめている世界のウラン資源需給に関する報告書。2007年版では、40か国からの公式情報に基づいてウランの資源量や探査状況、生産量および需要量のほかに、2030年までの予測所要量などを掲載している。

報告書はまず、世界の既存ウラン鉱山で130米ドル/kg以下で採掘可能な確認資源の量を2005年版の470万トンより80万トン多い550万トンと評価。既存鉱床の地質的な延長上に存在が推定される未発見資源量についても、05年版から50万トン上方修正して1,050万トンと見積もった。これは近年のウラン価格高騰の影響を受けて、既存鉱床の再評価や新たな鉱床発見によるものだと説明している。

報告書はまた、2006年時点の原子力発電規模や技術レベルに基いて計算すると、今後100年間は十分な確認資源量が存在するとしている。しかし、世界全体のウラン資源量が流動的で市場価格に左右される点も指摘。ウラン産業界が近年の価格上昇に反応して、新たなウラン鉱探査に多大な資金を投入していることに触れ、これらの06年の総額は世界全体で7億7,400万米ドルにのぼるとの計算結果を示した。これは04年実績の250%以上に相当しているが、07年はこの実績をさらに上回ることになるとの予想を示している。

報告書は次に、世界のウラン生産量について2006年末実績で3万9,603トンだったことを明らかにしており、これは世界で稼動している原子炉435基による総所要量(6万6,500トン)の約6割に相当すると指摘。不足分は約1万2,000発の核弾頭解体や減損ウランの再濃縮といった2次供給源で賄われたと説明した。しかし、これらの多くは現在、在庫量が減少しつつあり、不足分を補うには今後、新たな生産が必要との見方を示している。そして、新たな鉱床で採掘可能になるまでの典型的なリードタイムの長さを考えると、生産設備がタイムリーに整備されなかった場合、不足量は増加していく可能性があるとも警告している。

世界の原子力発電設備容量について報告書は2007年現在の372GWから2030年までに509GW〜663GWに増加すると見積もっており、これらに対して必要となるウラン資源量は、既存原子炉の炉型等から判断して年間9万4,000トン〜12万2,000トンになると計算。この拡大分は現在の確認資源量で十分賄うことができると強調するとともに、新型炉やサイクル技術の開発により、原子力を千年単位の長期間で利用していくことも可能だとの見方を示した。


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